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僕と彼のイルミネーション
第3章  不協和音


「チーサラ、よろしくっ」
 龍の声を聞き、拓海が取りに来る。座っていた席へ置くと、別の席へ移る。勿論、真琴も一緒に。
 好きだという気持ちを堂々と表せる真琴が、羨ましいと思った。複雑な片想いだが、どうにか上手くまとまらないかと考えてしまう。涼介も含めて。
「すいませーん。満席でーす」
 拓海の声が聞こえ、入って来たのは涼介。
 真っ直ぐ真琴の所へ行き、肩を掴む。
「マコちゃん。帰ろう」
「何だよ。オレの勝手だろー?」
「大分酔ってるみたいだし。送るから」
 その様子を見ていて気付いた。龍が隠れて電話をしていたのは、涼介だったのかもしれない。
 でも幼く見えても、真琴は21歳の成人男性。酒を呑んでも、法に触れてはいない。
「帰れよっ。楽しんでんだからっ」
「マコちゃん……」
 店中が注目して少し静かになったせいで、涼介の溜息が聞こえた。
 真琴が拓海を追いかけるのはいつもの事だと、涼介から聞いている。それを理解しているのに、わざわざ迎えに来るなんて。
 二人の関係が、よく分からない。
「帰れってばっ!!」
「明日、ちゃんと大学来いよ……」
 それだけ言うと、涼介は龍に頭を下げてから出て行った。
 店はすぐに、いつもの騒がしさに戻る。数時間もあっという間。
 真琴がフラつく足取りで、ボトルを持って来る。
「瑞希っ。ボトル空いたー。新しいのー」
 龍が席に着いていたから、銘柄を見て新しいボトルを出し、タグを付け替えた。
「どうもー」
 真琴は機嫌良く戻って行く。伝票は、拓海がやってくれている。
「マコちゃん。そろそろヤバくない?」
「ん……。酔った」
 笑っている真琴を立たせ、拓海が会計へと連れて来た。
 真琴の呑み代は1000円ほど。龍が隠すように会計をして、拓海が外へ連れて行く。
「タクシー拾いに行ってるから」
 龍に言われて頷いたが、三十分経っても拓海は戻って来ない。
「瑞希。ちょっと見て来てくれるか?」
「うん」
 外へ出てみると、平日なのに人通りが多かった。田舎と比べてしまうからかもしれない。
 見回すと、雑居ビルの隅で拓海と真琴が抱き合っていた。


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