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僕と彼のイルミネーション
第3章 不協和音
真琴を包み込み、拓海が背中を撫でている。
僕に気付いた拓海に、鋭い視線を向けられた。
「タクシー止めろよ」
「う、うん……」
通りかかったタクシーを止めると、拓海に店へ戻るように言われる。
無言で頷いてから、店内へ入った。
龍は龍だし、拓海だって拓海だ。やはりこの世界では、“誰とでも”というのが当たり前なんだろうか。
「どうだった?」
龍に訊かれて、一瞬戸惑った。二人が抱き合っていたとは言えない。
「タクシーが、中々来なかった、みたいで……」
カウンターへ入ると、拓海が戻って来た。何でもない顔をして、客の席に着く。
何もかもが、上手く行かないだろうか。
龍は無理矢理僕を抱き、その恋人の拓海は、真琴と抱き合っていた。真琴は、心配して来てくれた涼介に、帰れと怒鳴っていたし。
よく分からない。
それは顔には出さずに、カウンターでの接客を続けた。
店が終わり、龍と一緒にタクシーに乗ってマンションへ帰る。
リビングへ行くと、龍は驚いた顔でテーブルを見た。
「なんか別のもん、喰ったのか?」
「ううん……」
「なんにも喰ってないのか?」
無言で頷く。
「座れ。ちょっと待ってろ」
龍がキッチンへ行ってしまい、仕方なくソファーへ座った。
少しして龍が持って来たのは、最初に真琴に出していたのと同じ物。それと、温めるだけのご飯。
「喰わないと、持たないぞ」
「うん……。美味しい……」
肉野菜炒めに、トマトが入っている。一日以上振りの食事を、かきこんでしまった。
見ると、龍は静かな笑顔で煙草を吸っている。
「マコちゃんはなあ。また別れたんだよ。相手は知らねえけど」
それで、酔うまでは元気が無かったのか。呑みたいと言っていたし。
「数ヶ月ペースかな。いつも落ち込んで店に来るから」
「真琴さんなら、モテそうなのに……」
いつも拓海を追いかけているが、それは友達として好きなだけだろうか。でも抱き合っていたのは、龍には言えない。
「涼介さんは……?」
「よく分かんねえんだよな。涼介が、マコちゃんを好きなのしか……」
龍が、キッチンから水割りのセットを持ってくる。
何となく水割りを作ってあげ、龍へ出した。