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僕と彼のイルミネーション
第3章  不協和音


「サンキュっ」
 この料理のお礼。ただ、それだけ。
「まっ。色々と、上手く行かねえもんだな……」
 煙草の煙を、初めて綺麗だと思った。その理由は分からない。
「でも、マコちゃんが来ると、少しだけど、売り上げは伸びる上がるからなあ」
「え?」
 真琴が払ったのは1000円程度だったのに。
「不思議そうな顔してんな」
 龍が笑い出す。
「マコちゃんが拓海に付いてった席で、客のボトルを呑んでんだよ」
「あっ」
 ボトルが空いたと、真琴が持って来ていた。
「あの店じゃ、ボトルが空かないと儲けになんねえよ。席料と料理だけじゃな」
 だったら、呑めない僕は戦力外だろう。
「客も、マコちゃんが座れば喜ぶし。あのルックスで、盛り上げるのも上手いからな。その分、マコちゃんの料金は安くしてる」
「じゃあ……。僕は、役に立たないね……」
「そんな事ねえぞ。人手が足りなかったのはホントだし。分かるだろ? 働いてみて」
 確かに。もっといてもいいくらいだ。
「疲れたろ。寝ていいぞ?」
「うん。あの……」
 出そうになった言葉を切って、立ち上がった。
「ん? なんだ?」
「ううん。おやすみなさい」
「おやすみー」
 言いかけたのは、昨夜どこへ泊まったのか。でも、そんな事を聞いても仕方ない。
 部屋へ入ると、空のチェストをドアの前へずらした。
 ドアは外開きだから開けられてしまうが、入口は塞げる。僕でも動かせるから龍ならもっと簡単だろう。でも、ささやかな抵抗。
 ベッドへ入っても、龍の話が頭から離れない。
 真琴はよく恋人と別れる。でも拓海と抱き合っていた。涼介は、そんな真琴を想っている。そして龍と拓海は恋人同士。
 複雑すぎる。
 多分男女でも上手く行かないなら、男同士は尚更だろう。
 僕にもいつか、愛し合える人が見つかるんだろうか。
 やっと眠りにつけそうになった時、乱暴なノックと共にドアが開いた。


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