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僕と彼のイルミネーション
第4章 訪問者
ネコは女性役。タチが男性役だとは知っている。でもそれは、セックス中での事。
日常生活では関係ないし、特に一般人には、普通の男に見えるはず。
「ビックリしたー。瑞希がタチには見えないもんなー」
笑っているが、真琴だってそうだろう。
つまり。僕と真琴が一緒に寝るのは、普通の女の子同士が寝るのと同じ。そうなると、龍と僕は男女で同居している意味になる。
昼だが、寝起きの食事での会話とは思えない。
「じゃあいいじゃん。また一緒に寝よっ」
真琴はご機嫌だが、僕は複雑な気持ち。
男性に抱かれたいと、具体的に思ってはいなかった。
龍のような容姿に憧れたのは、自分がそうなりたかったから。“可愛い”より、“格好いい”と言われてみたかったせいもある。
真琴は小柄で童顔でも、綺麗な顔立ちの美少年。中世的にも感じるが、どちらかと言えば格好いい。
「どした? 瑞希。ちゃんと喰わないと、今日も仕事だぞ」
バターを塗ったトーストを、取り皿へ置かれた。
性癖は解っていても、自分がどこに属するか解らないのが不安。龍に抱かれてしまったが、僕にあんな事が出来るだろうか。
「瑞希? どうしたの?」
「あ、うん」
トーストに噛り付いた。
「あっ、わりい」
龍のスマホが鳴り、立ち上がりながら「はい」と言っている。
「ああ。ここにいるぞ。安心しろ。昨夜は、瑞希と一緒に寝たから」
龍が座り直して真琴を見る。
「今、三人でメシ喰ってる。ああ。ホラ、マコちゃん。涼介」
スマホを差し出され、苦い顔で真琴が受け取った。
「解ってるよっ。ん。ん……。解った」
短い会話だけで終わったらしく、通話を切って龍に返す。
「涼介が、誤魔化しといてくれたって。大学なんて、行きたくなかったのに」
「ちゃんと卒業しろよ。他に目的もねえんだろ?」
「龍だって、辞めたじゃん……」
龍の過去を初めて聞いた。
「行ったのは二年だけだし、俺は店をやりたかったから。金貯める為に、働いてたんだよ」
四年と言っていたから、龍が“フェリータ”を開いたのは21歳の時。
続けてこられたのは、人柄のお蔭もあるだろう。
でも、大学を中退してまで店をやりたかった理由は気になる。