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僕と彼のイルミネーション
第4章 訪問者
人が行動を起こすには、何かしらの理由があるはず。僕だって同じ性癖の人を求め、自由になれると思ったから上京した。
「ごちそうさまー」
真琴はサラダやスクランブルエッグに、トーストを3枚も食べて食事を終える。細身なのに、その食欲に驚いた。
「シャワー浴びてくるっ」
真琴は鞄から下着を出し、すぐに浴室へ行ってしまう。この家を知り尽くしているようだ。
「マコちゃんは、用意がいいな」
龍は笑っているだけ。
「真琴さんて、ここによく来るの?」
「ああ。涼介と一緒に、たまにな。一応、大学の後輩だから。同時期じゃねえけど」
それで親しかったのか。でも真琴の性格なら、誰とでも仲良くなれそうだ。実際、店でも人気者。
「真琴さんは、明るくていいね……」
僕は、地元でも友達が少なかった。嫌われてはいなかったが、性癖のせいで毎日悩んでいたせいだろう。
考えが顔に出てしまったのか、龍が笑顔を見せる。
「お前は、お前のままでいいんだぞ。俺は俺のままだし……」
言い方が、少し淋しそうだった。
龍にだって、悩みはあるんだろう。真琴だって、恋人と別れて落ち込んでいた。
特殊な性癖じゃなくても、人間はみんな悩みがあるはず。僕は自分の性癖が異常だと悩んでいたが、この街に来て少しだけ変われた。
色々な意味はあるかもしれないが、同じ性癖を持つ者が集まる街。
ここでなら、安心していられる。
マンションでの龍への警戒は、まだ解けていないが。
「マコちゃんが終わったら、お前もシャワー浴びちゃえよ。俺は片付けがあるから」
「僕も手伝うよ」
店で、洗い物にも慣れた。
「いいよ。俺がやった方が早いし」
龍が笑っている。
確かにそうだろうが、居候として何かしたい。
体を好きにされるのは、もう嫌だ。龍はそう思っていないかもしれないが、家賃の代わりにセックスするようで。
「ごちそうさま。美味しかった」
真琴の皿と重ねて、運びやすくだけしておく。
店のようだと思い、気になった事を口にする。
「ねえ、龍。“フェリータ”って、どういう意味?」
訊くと、龍は柔らかな笑顔で溜息をついた。