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僕と彼のイルミネーション
第5章  涼介


「何でだよー。いいじゃん。早めに帰るからー」
「いいから。座ってろよ」
 拓海も、真琴が来ないのを気にしている様子。チラチラとこっちを見ている。
 龍も珍しく気にしている様だ。
「じゃあ、帰る!」
「ちゃんと帰って、レポートやれよ」
「分かってるよっ!」
 真琴は本当に出て行ってしまった。
「涼介さん……」
「もう、疲れたなあ……」
 心配して見たが、涼介は目を合わせずに水割りを飲み干す。
「マコちゃんに会ったのは、入学してすぐなんだ。すぐ仲良くなって、ゲイって事も告白しあった……」
「いらっしゃいませー」
 二人の声は聞こえていたが、僕はアイスとミネだけ出して涼介の話に聞き入っていた。
「ずっと、あんな調子なんだよ。呑みには誘ってくるし、大学だと、いつも付いてくるのに……」
 何も言えないまま、涼介の水割りを作る。
 涼介は、本当に真琴が好きなんだ。それなのに一緒に呑みに来れば、拓海を追う姿を見せられる。つらいだろう。
「最初は、自由奔放な真琴が好きだったのに……」
「ミネっ」
 拓海の声に開けたミネをカウンターへ乗せる。その間も、涼介から目が離せなかった。
「あ、瑞希クンも飲みなよ。ジュース」
「いただきます……」
 軽くグラスを合わせると、涼介の溜息。
「何やってんだろうなあ。俺……」
 何も言ってあげられないのが、凄く悔しかった。
 僕はまだ、本当に誰かを好きになった経験がない。高校時代に憧れの先輩はいたが、先輩はゲイじゃないから普通に話すだけで。
「真琴は、何度も父親が替ってるんだ。母親が離婚する度、家が大きくなるって、笑ってたけど……」
 大人の事情も、まだよく分からない。
「あいつ、本当は淋しいんだよ。兄弟もいないし。今は父親がいなくて、母親は家を空ける事が多いし。強がりだから、呑んで忘れようとして……」
 あんなに明るい真琴が、そんな生活をしていたなんて。
 つい、溜息をついてしまった。
「ごめんな。今の話は、忘れてよ」
「はい……」
「どした?」
 カウンタ―へ来た龍が、隣で調理を始める。
「瑞希クン、いいなあ、と思って」
「え?」
「素直だし。可愛いし」
 龍が来たから、話題をすり替えたかったんだろう。


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