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僕と彼のイルミネーション
第5章  涼介


「龍。瑞希クンを口説いてもいい?」
「ああ。けど、付き合っても、客には内緒だぞ。従業員は一応、売りもんだからな」
「瑞希クン。いいってさ」
 驚いて、龍と涼介の両方を見た。
「えっ?」
「弄ぶなよ」
 言い残し、龍は料理を持って行ってしまう。
 “売りもん”というのは、スナックなどのホステスのような意味だろう。結婚していても、恋人さえいないと誤魔化すように。
 この店に指名は無いが、拓海目当ての客もいる。
「真琴は、きっぱり忘れるから。瑞希クン目当てで通うよ。土曜だけだけど」
 いきなり言われても困る。それにそんなに簡単に、真琴を忘れられるのだろうか。大学に入ってすぐ会ったなら、三年近く想っていたのだろう。
「新しいボトル、入れてくれる?」
「え? でも……」
 “真琴・涼介”のプレートのボトルは、半分ほど残っている。
「俺の名前だけで。真琴が来ても、出さないでよ?」
「はい……」
 龍を呼び、新しいボトルを出してもらう。ボトルは分かっても、タグが解らなかった。
 引き出しから新しいタグを出して、龍が“涼介”と書く。
「龍。ペン貸して」
「ああ」
 涼介はそれで、“真琴・涼介”の“涼介”だけを塗りつぶした。
 本気なんだろうか。
「これでよし」
 龍にペンを返す涼介は笑顔。淋しそうでもない。
「今日は帰るよ。龍、会計して。今日だけ、マコちゃんの分も一緒に。瑞希クン。また土曜に来るから」
 会計を済ませた涼介は、手を振って店を出て行った。
「どうすんだ、瑞希」
「ど、どうって?」
「涼介はいいヤツだぞ。将来は医師だし。玉の輿だな」
 龍は笑っている。からかわれているのは分かった。
「涼介さんには、真琴さんが、似合うと、思う……」
「前も言ったけど、俺にもよく解んねえんだよ。あそこは……」
 今まで色々な人間模様を見てきたはずの龍でさえ、分からない二人。それが、僕に理解出来るはずもない。
 それでも、何となく涼介の気持ちだけは分かる気もした。
 真琴の事を、無理矢理忘れようとしている。
 自分を騙して。
 自然と、溜息が漏れた。


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