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僕と彼のイルミネーション
第5章 涼介
マンションへ帰ると、龍はまた呑み始める。
人は何故、酒を呑むのだろう。
仲間と楽しむ為もあるだろうが、龍はいつも1人。それで、楽しいのだろうか。
まだ呑めない僕には解らない。
「龍。哀しい?」
何となく訊いてしまった。
「は? 何だよ。いきなり……」
「ううん。おやすみ……」
「ああ。おやすみ」
涼介はもう寝ただろうか。それとも、勉強でもしているのか。
3年近くも想い続けた相手を、すぐに忘れられるはずはない。キッパリ断られたとしても、想いは残るだろう。
ベッドに入ったが、中々寝付けない。
その時、ノックの音。
警戒しながら、ゆっくりとドアを開ける。
「涼介が、明日呑みに行こうってさ。今電話があったから、すぐ折り返すって言っといたけど」
「だって、仕事が……」
「店には、21時までに入ればいいよ。平日に混むの、それくらいからだし。涼介も、それでいいって」
涼介と、ゆっくり話をしてみたいとは思っていた。真琴について。
「涼介さんと真琴さんの番号、教えて」
「個人情報だからなあ……」
「じゃあ、龍がかけてよ」
頷く龍と一緒に、リビングへ行く。
涼介に電話をしてもらって代わり、18時半に“麗(れい)”という店での約束をした。店の住所も聞き、スマホの番号も教え合う。
次は真琴にかけてもらい、また同じ事をした。
「お前、なーに企んでんだ?」
「何でもないよ。おやすみ……」
部屋に戻り、すぐベッドへ入る。
いい人だと思うが、涼介と2人切りはまだ怖いのもあった。襲われる心配じゃなくて、僕からの会話が途切れそうで。
客として呑み屋に行くのは初めて。
でも涼介が誘う店なら、変な所ではないだろう。そう思いながら目を閉じた。
「瑞希クン!」
“麗”の前で待っていると、涼介がタクシーから降りてくる。
「ごめん。待たせちゃった?」
「ううん。早く、来すぎたから……」
店の看板はもう出ている。
昼間龍に訊くと、この店はフェリータと1つ通りが違うだけだと言われた。店自体健全なのも聞いたから安心。
涼介さんに着いて、店内へ入った。ウチの店と同じような造りだが、少しだけ広い。
「涼介、いらっしゃい。その子は?」
「瑞希です……」