この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
僕と彼のイルミネーション
第5章 涼介
テーブル席に案内され、ボトルを出される。
そこにも、“真琴・涼介”というタグ。
「新しいの、入れてくれる? それと、瑞希にはジュース」
「はい」
「まだ残ってるよ? ボトル」
従業員が不思議そうに言う。
「新しいタグと、ペンもね」
「ん……」
涼介は、またフェリータでと同じ事をする。
新しいボトルは自分の名前だけ。元のボトルの名前を、ペンで塗りつぶす。真琴は、どう思うだろう。
涼介はいくつかつまみを頼み、水割りとジュースで乾杯した。
「瑞希の名前を書いてもいいけど、呑まないもんね」
「着いたら、お邪魔かな?」
さっきの従業員が、そう言いながらも横の丸椅子に座る。
「可愛いね。ウチで働けばいいのに。募集してるよ」
言われて、首を振った。
「フェリータで、働いてます……」
「ああ。龍の所か。誘ったら、龍に怒られちゃうよ。そう言えば、龍と来た事あるよね? かなり前に」
「いえ。初めてです……」
従業員は首を傾げている。
「可愛い子は、似てるのかもね。1杯いただきまーす」
龍の顔の広さにも驚いたが、以前も僕に似たような子が働いていたのだろうか。初日に拓海が、“龍のタイプ”と言っていたのはそのせいだろう。
「涼介、大学の方はどう?」
「んー。内容話すと、かなりグロいよ?」
そう言えば、涼介も医学部だった。
「やっぱやめよう。その話」
従業員が笑っている。
「いらっしゃいませー。ちょっと失礼しまーす。じゃあ、マコちゃんのボトルは下げるね」
従業員がボトルを持って行くと、涼介が笑い出す。
「瑞希は聞きたい? 大学の話……」
「い、いいです……」
医学部なら、色々な事をするのだろう。血を見るのも苦手な僕には、絶対に通えない大学だ。まず、受かるはずもないが。
「瑞希も苦手そうだもんな」
いつの間にか、呼び捨てにされていたのに気付く。
龍や拓海。真琴や他の客にも呼び捨てにされているから、気付かなかった。
本当に、僕を口説くつもりなのだろうか。
「いらっしゃいませー」
「よっ。瑞希からの誘いなんて、珍しい……。何で涼介がいんだよっ」
「何でマコちゃんが?」
2人は、少しの間見つめ合っていた。