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僕と彼のイルミネーション
第6章 2人
「オレは、瑞希に呼ばれたんだよっ」
「俺が、瑞希を誘ったんだけど?」
不満顔ながらも、真琴は僕の隣に座る。
「はい。マコちゃんのボトルと、グラス」
従業員が持って来たボトルのタグを見て、真琴の表情が変わった。
「何だよ。これ……」
「ボトルは、別にした方がいいと思ったから」
「だから、何でだよっ」
昨夜真琴に連絡したのは、19時の待ち合わせ。涼介とは、わざと30分ずらした。入口で会えば、外でもめるかもしれないと思ったから。
僕は真琴の水割りを作りながら、様子を伺う。これ以上険悪になりそうなら、解散した方がいいだろう。
「だって、おかしいだろう? 2人で1本のボトルなんて……」
「いいじゃん。別に」
水割りを飲み干すと、真琴はウイスキーだけを入れた。
「真琴さん……」
水を足そうとした手を、真琴に払われてしまう。
拓海がいない所で3人で楽しく呑もうなんて、僕の考えが浅はかだったのかもしれない。
「乾杯……」
ジュースのグラスを出すと、2人共乾杯はしてくれた。
「マコちゃんは、いつも彼氏がいるだろ? その相手が見たら、変に思うよ?」
「それが何だって……」
「マコちゃん。どうしたの? もう酔ってる?」
つまみを運んで来たのは、30代に見える男性。中肉中背で、優しそうな笑顔。
「え……」
僕を見て、少し驚いた顔になる。
「キミは、初めてだよね? 店長の、周平(しゅうへい)です」
「初めまして。瑞希です。フェリータで働いてます」
「フェリータ?」
一瞬不思議そうな表情を見せたが、すぐ笑顔に戻って丸椅子に座った。
「龍の店か。暫く行ってないなあ。1杯いただきます」
そう言いながら、さりげなく真琴のグラスに水を足している。
「周平さーん。涼介が虐めるんだよー」
「どうしたの? 喧嘩なんて珍しいね」
周平の優しい言い方と笑顔に、僕まで癒されるよう。
「オレが、レポートの資料集めとか、涼介にさせたからだろ……」
「そんなの、いつもだろう?」
「まあまあ。仲直りの乾杯。瑞希くんもね」
4人でグラスを合わせたが、真琴の表情は曇ったまま。
作戦失敗かと考えていた時、僕のスマホが鳴った。
「うん。解った」
通話を切って、涼介を見る。