この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
僕と彼のイルミネーション
第6章 2人
「店に団体が入ったから、早めに戻って欲しいって……。龍から」
「じゃあ周平さんも、フェリータ行こうよー」
真琴がせがむように言う。
「でも、忙しいから、呼ばれたんだよね?」
「瑞希、龍に訊いてみてよ。カウンターでいいから、3人座れないかって」
すぐに龍に電話で確認をして、周平も少しだけと、一緒にフェリータへ行く事になった。
「こっちー。ここだよー」
真琴が、路地へ入って行く。
太めだったら通れないような、狭い通路。
「マコちゃん。猫みたいだね」
「オレ、ネコだけど?」
真琴の返事に、周平が苦笑している。
僕と真琴は割と楽に通れたが、周平と涼介はやっとという状態。
「最近、太ったかなあ」
周平が、笑いながらシャツの埃を払っている。涼介も同じ。でも真琴の抜け道のお蔭で、もうフェリータのネオンが見えている。
「行こうぜっ」
歩き出す真琴の後を、3人で着いて行った。
店内へ入ると、テーブル席は客でいっぱい。僕は急いでカウンターの奥にあるエプロンを着けた。
「瑞希、同伴かあ。あっ、周平さんも……。お久し振りです……」
龍の真面目な敬語なんて、初めて聞いた気がする。
カウンターの端から3席には、予約席のプレート。それをどかすと、龍は3人を座らせた。
「瑞希、後は任せるぞ。周平さんの分は、俺の奢りな」
真琴と涼介のボトルを出すと、龍はもう1本新品のボトルを出して行ってしまう。
「悪いね、龍」
「周平さんだから、特別だよ」
「今度ウチに来たら、お返しするからね」
そう言う周平に笑顔を見せてから、龍はテーブル席へ着く。
「ここもかよ……」
真琴がボトルを見て呟いた。
“真琴・悠介”だったタグは“悠介”が塗りつぶされ、悠介は新しいボトル。昨夜やった事だ。
「何なんだよ……。そんなに、オレが嫌いかよ……」
周平の店では勢いがあった真琴も、落ち込んでいるよう。
僕は3人の水割りを作り、それぞれへ置いた。
「フェリータは久し振りだなあ。乾杯。マコちゃん?」
周平の言葉で涼介もグラスを持ったが、真琴は俯き加減。
「もう、オレとは、呑みたくないって事?」
真琴は、涼介をジッと見つめている。