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僕と彼のイルミネーション
第6章 2人
「オレがちゃんとレポートとかやんないから、怒ってんの?」
「違うよ……。一緒に来ても、結局、バラバラに呑むだろう? だから……」
「せっかく来たんだから、楽しく呑もうよ。ねっ?」
周平が間に入るが、真琴の表情は暗いまま。
僕も涼介にジュースを勧められ、4人で乾杯した。
涼介と周平は笑いながら話しているが、真琴は呑んでいるだけ。
その様子を見ながら、僕は洗い物をした。
「いらっしゃいませー」
新しい客がカウンタ―へ座る。
知っている顔だから僕でもボトルを出せ、おしぼりも出す。
たまに来るが、中年に近い客は珍しい。マナーも良かったから、顔と名前を憶えていた。
チャームを出し水割りを作ると、「だから何だよっ!」と真琴の声。テーブル席の団体も注目していたから、真琴の前へ行ってみる。
見ると、真琴のグラスはウイスキーだけのような濃さ。
「マコちゃん。呑みすぎちゃった?」
周平も宥めているが、真琴はロックのようなグラスを空け、ウイスキーだけを注いだ。急いで氷を入れようとすると、真琴に睨まれる。
「余計な事すんなよっ」
「マコちゃん……」
涼介も困り顔。
「オレはさあ、別に大学なんて、行きたく、なかったんだよ……。親と高校のセンセーに、勝手に決められてさあ……」
話している間も、真琴は呑み続けている。
また怒鳴られるのを覚悟で、合間に氷とミネを足す。
「瑞希っ。新しいボトルっ」
「うん……」
龍を呼んだ。同じボトルもタグももう解るが、これ以上真琴に出していいものなのか。
「マコちゃん。どうしたんだよ」
カウンターに来た龍が、真琴の背中を軽く叩く。
「龍。ボトル入れてよ」
頷いてから中へ来た龍は、新しいボトルを出し、タグに“真琴・涼介”と書いて出した。
「違うよっ。涼介が、嫌がるからっ!」
そう言うと、外したタグを投げる。
「嫌がってるわけじゃないって……」
涼介も宥めるように言うが、真琴は新しいグラスも出せと言い、そこへ注いだウイスキーだけを呑み干した。
「マコちゃん……。今日はもう帰ろうか」
溜息混じりの涼介の声。
「涼介達は呑めよ。オレは帰るからっ」
真琴は1万円札を置くと、店を出て行ってしまった。
「いいの? 涼介くん……」