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僕と彼のイルミネーション
第1章 繁華街
タクシーに乗って店へ着くと、彼は用があると言ってどこかへ行ってしまう。
渡された格好いいデザインのエプロンを着けたが、何をしていいか解らず、開店前のソファーへ腰を降ろした。
ドアが開き、金髪の青年が入って来る。
「まだ、開店前で……」
「誰?」
唐突に訊かれた。
「働く事に、なって……」
「ふーん。龍のタイプだな」
青年に、値踏みするように全身を見られる。
細身で、僕より少し身長が高い。目尻が上がっているが、繊細そうな綺麗な顔立ち。
「ただいまー。お、拓海(たくみ)、オハヨ」
龍は、両手にスーパーの袋を持っている。
「何? こいつ」
「瑞希。18歳。スカウトしたんだ。人気出そうだろ?」
悠斗が、溜息をつく。
「オレじゃ、ダメなのかよ……」
「人手も足りないだろ? 瑞樹、こいつがもう一人のバイトの、拓海。23だよな?」
「ああ……」
拓海は不機嫌そうにカウンターの奥へ入り、僕と同じデザインのエプロンを着けた。
「よろしくお願いします……」
拓海へ言ったが、「ああ」と言ってこっちも見てくれない。まだ会ったばかりで、失礼な事をした覚えはないのに。
「瑞希は、その辺の掃除をよろしく。俺達は、仕込みがあるから」
龍も同じエプロンを着ける。
「はい……」
龍が教えてくれた通り、奥から掃除用具を持って来た。掃除なら、僕にも出来る。
仕込みの後、二人はグラスを磨いたりもしていた。
「龍、そろそろ看板出すよ」
「頼む」
入口の横にあった重そうな看板を持ち、拓海が外へ行く。すぐに戻ってくると、店内のライトを点ける。
有線らしきBGMも流れ始め、テレビで観ていた都会の呑み屋の雰囲気に変わった。
僕は急いで掃除用具を片付ける。
「いらっしゃいませー」
少しして、四人連れの客。
「瑞希、カウンターに入れよ。出なくていいからな」
「はい……」
急いでカウンターへ入った。
「あれ? 新しい子?」
「瑞希。18だって」
ボトルを探しに来た拓海が言う。
席に着きながらの客に見られ、頭を下げた。
客はみんな若い。二十代だろう。
緊張する胸を押さえてから、掃除をしていた事に気付き、手を洗った。