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僕と彼のイルミネーション
第6章 2人
これで元通り。いや。2人共、一歩進めたのだろう。
もし僕に想いのすれ違いがあったら、真琴のようにはっきりと言えないままだと思う。
もっと、強くならなければ。
「カンパーイ」
真琴の声で、4人で乾杯する。
「あっ。みんなー。涼介はオレのもんだから、手え出すなよー!」
テーブル席には常連も多く、冷やかしの声と拍手が起きた。
周平も、僕も拍手をする。
「真琴……」
涼介は照れているが、笑顔だった。
心地好い空間。
真琴は涼介を見つめながら話し、涼介も頷きながら笑顔。
「瑞希くんは、この店、いつからなの?」
周平に訊かれる。
「2週間くらいです」
「そうか……」
周平は初めて僕を見た時、驚いたような表情を隠していた。その前の従業員には、龍と来た事があると言われたし。
どんな理由で辞めたのか解らないが、以前フェリータには、僕に似た従業員がいたのだろう。
龍が、調理をした物を3人の前へ置く。僕は取り皿を出した。
「俺からのお祝い」
「あっ。オレが好きなやつだー」
置かれたのは、肉野菜炒めにトマトが入った物の大盛り。
真琴が落ち込んでいた時や、僕が何も食べなかった時にも作ってくれた。
この料理は、メニューに載っていない。いわゆる、裏メニューというものなのだろう。
笑顔を見せると、龍はテーブル席へ行ってしまった。
拓海も時々だが、調理をしている。僕も早く出来るようにと思ってはいるが、包丁さえ殆ど使った事が無い。
拓海が空いた皿を下げに来て、笑顔で真琴の頭をポンポンと叩く。
「だから何度も言ったろ。素直になれって」
拓海と真琴が抱き合っていたのは、真琴を慰めていたのかもしれない。拓海は、真琴から理由を聞いていたのだろう。
「じゃあ、そろそろ失礼するね。店が混む頃だから」
周平が立ち上がると、龍が来る。
「周平さん。店が終わった後、行っていい?」
「いいよ。裏口を開けておくから。じゃあ、ごちそうさま」
また、意味深な会話。
深夜に、何の用だろう。
気になりながらも、僕は片付けを始めた。