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僕と彼のイルミネーション
第6章 2人
閉店になり、龍が止めてくれたタクシーに乗る。僕1人だと歩いて帰りそうだからと、無理矢理タクシー代も持たされて。
龍は、これから周平の所へ行くのだろう。
「今晩帰んねえと思うけど、ちゃんとメシ喰えよ」
「うん……」
タクシーのドアが閉まり、走り出す。
以前置いて行った、マンションと店の鍵は持ったまま。龍に、「持っとけ」と言われたから。
真琴と涼介が上手く行ったと思ったら、今度は龍の行動が解らない。いきなり暴行したと思えば、優しくなったり。
周平の所へ行くと聞いた拓海は、少し不機嫌そうだった。龍と拓海の仲も、よく解らなくなってくる。
考えながら、リビングのソファーへ座った。
呑めるなら、こんな時お酒で忘れられるのかもしれない。龍は何かを忘れたくて、いつも呑んでいるのだろうか。
する事も無いし、明日も仕事。今日は色々とあって疲れたから、早々にベッドへ入った。
昼に起きてリビングへ行ったが、龍の姿は無い。
浴室やトイレにも声をかけたが、どこにもいなかった。
シャワーを浴びる為に部屋へ着替えを取りに戻ろうとすると、何かの音がする。
龍の部屋で、目覚まし時計のアラーム音がしているようだ。
そのまま待ってみたが、音は止まらないし龍も出て来ない。ドアをノックしても、返事は無かった。
思い切って、静かにドアを開けてみる。
「龍……?」
誰もいないが、アラームは鳴り続けていた。
リビングやキッチンなどは綺麗なのに、龍の部屋はゴチャゴチャに物が置かれている。大きなベッドの横には、積み上げられた本。
手を伸ばしてアラームを止めた時、本の山にぶつかってしまった。
「あっ」
抑えようとしたが遅く、上の方が崩れてしまう。
順番は解らないが、取り敢えず積み直すしかない。
崩れなかった下の方には、医学書もある。大学に行っていた頃から、こんな状態だったのだろうか。
本を積み直していると、間から数枚の紙が落ちてしまった。
その中にあった1枚の写真に目を奪われる。
似ているが、僕じゃない。
茶色い髪の少年と龍。龍が少年の肩を抱いている。2人共、笑顔だった。