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僕と彼のイルミネーション
第6章 2人
インターフォンのチャイムがはっきり聞こえたのは、ドアを開けっぱなしにしていたから。
勝手に部屋に入っている時に龍が帰って来ても、アラームを止める為だと証明出来ると思って。
適当な本に写真や落ちた紙を挟みいくつか積んでから、リビングのインターフォンに出た。
「寝てたのか?」
画面に映ったのは拓海。
「開けろよ。届け物……」
「はいっ」
急いで玄関へ行き、鍵とドアを開けた。
「ホラ。食事。龍に頼まれたから。じゃあな」
ビニール袋を置くと、拓海はそのまま帰ろうとする。
「拓海さん。あの……」
「何だよ」
写真の少年について訊きたかったが、上手く言葉が出なかった。拓海は、龍の恋人かもしれない。拓海に、龍の昔の恋人について訊くのは躊躇われる。
「いえ……。ありがとうございます」
「ちゃんと喰えよ。わざわざ持って来たんだからな」
「はい……」
拓海の乗ったエレベーターが下るのを見てから、ドアを閉めた。
玄関に置かれた袋を持ってリビングへ行き、テーブルへ置く。中を見ると、まだ少し温かいピラフ。サラダも添えてあった。
食欲は無かったが、龍と拓海の気持ちだからと口へ運ぶ。龍の作る物とは味付けが違うが、美味しい。
食べながらも、頭から離れないのは写真の少年。
周平の店へ龍と行ったのは、あの少年だろう。少し暗い店内なら、同じ人物に見えるかもしれない。周平も僕を見て、一瞬驚いた顔をしていた。
拓海に食事の世話をさせたなら、龍はまだ帰らないのだろう。
急いで龍の部屋へ行き、途中だった物を全部積んでから戻った。そして、無理にでもピラフを食べる。
残っていたら、戻った龍にまた心配されてしまう。
龍が誰と付き合っていても構わない。拓海でも周平でも、他の誰かでも。居候で従業員の僕には、関係がない事だ。
でもあの少年に似ていたから僕を雇い、暴行されたとなると、話は違ってくる。
あの少年の代わり。
酔った勢いの暴行じゃなくて、僕をあの少年の代わりに抱いたのだろうか。似ているからと。
ゆっくりだが何とかピラフを食べ終え、パックをゴミ箱へ捨てた。