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僕と彼のイルミネーション
第7章 写真
でも、どうしてここまで深く考えてしまうのか、自分でも解らない。
1番知りたいのは、僕を犯した意味。
愛情が無いのは解っている。気まぐれなら、自分の中だけで消化するしかない。でも写真の少年の代わりなら、僕が僕として見られていないのが悔しいと思った。
本を倒してしまった経緯をきちんと話し、直接龍に訊くのが早いのに。そんな勇気もない。
知りたいはずなのに、現実を突きつけられるのが怖かった。
「龍は、昨夜……。どこに、泊まったんですか?」
「ウチだよ。でも、本当に訊きたいのは、それじゃないよね?」
見破られてしまった。周平はやはり大人で、この街での経験も長いからだろう。
「話せるようになったら、連絡してくれる? 番号とメアド、交換しようか」
鞄からスマホを取り出し、交換をした。
「落ち込むより、誰かに話した方が、楽になれるよ? 誰にも言わないし。良かったら、いつでも聞くから」
「ありがとうございます……」
深く、頭を下げる。
「今日、店はいいの?」
「失敗ばかりしてたから、体調が悪いと思われて。怒ってないから、休めって言われて……」
「でも1人になったら、余計な事まで、色々と考えるよね? 店に戻れば? 元気よく」
その方がいいかもしれない。マンションへ戻っても、1人でもやもやするだけだ。
仕事でも、楽しんだ方がいい。
「はい。戻ります。あの、今日の事は……」
「大丈夫。誰にも言わないから。龍にも。じゃあ、行こうか」
「はい」
周平の温かな笑顔のお蔭で、僕も自然と笑顔になれた。
「この店の事も、秘密だからね」
「はい」
僕だって言えない。
入って来た時、BGMに紛れて甘い声が漏れ聞こえていた。空耳かと思ったが、恋人同士なら何をしても構わないだろう。
周平の店の前で礼を言い、フェリータへと歩き出す。
昨日の細い抜け道を出ると、店が見える。少しの間なのに、何故か懐かしいように思えた。
それは、フェリータが好きだからだろう。
僕の居場所。
1度早退した言い訳を考えながら、店へと走った。