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僕と彼のイルミネーション
第7章 写真
そう思いながらリビングへ行くと、龍はまた呑んでいる。
「作るよ……」
向かいに座り、水割りを作った。僕もジュースを持って来て、乾杯する。
「龍は、ずっと東京なの? 答えたくなかったら、いいけど……」
「別に。小学校までは、神奈川。親父の病院が都内に移転したから、東京に来た」
「お父さん、お医者さんなの? 凄いね」
龍が低く笑う。
「凄いかどうか、知らねえよ。俺はただ、その家に生まれただけ。お前だってそうだろ?」
北海道の田舎で生まれ育った僕が、神奈川県生まれの龍と、東京で出会った。
男女なら、全く違う出身地同士で結婚するのも普通だ。国が違っても。
「よく言われたてたよ。ガキの頃から周りに。龍くんは、お医者さんになるんでしょって」
「長男?」
「ああ。俺の代わりに、妹が医大に行ってる。俺はさあ、親にカミングアウトしたから」
ゲイだというのを言ったのだろう。僕には、そんな勇気は無い。田舎が嫌だから、東京に出たいと言っていただけ。
今思えば、いい所だった。のんびりとした、自然豊かな町。みんなが知り合いで優しくて。それは、東京に来てやっと解った事。
「どした?」
「龍って、勇気あるね。僕は、誰にも言えなかった……」
「諸刃の剣だな。黙ってれば、みんなそのままだけど苦しい。口にすれば、気持ち悪がられたりする。けど、それが本当の俺だから」
呑んだグラスを置くと、カランと澄んだ音。店ではBGMがかかっているから、あまり聞こえない。
「何が目的で、お前はこの街に来たんだ?」
「え……」
目的。
この街へ来れば、何かが変わると思った。でもそれは受け身的な考えで、何かがしたかったというわけじゃない。
僕は、田舎から逃げてきただけ。
「わりい。イヤな言い方だったな……。疲れたから寝るわ」
龍が部屋の方へ行く。
僕の目的は、何だろう。
考えながら、暫くその場に座っていた。