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僕と彼のイルミネーション
第8章 困惑
マンションへ帰ると、2人は向かい合ってソファーへ座っている。
龍が用意した水割りを呑みながら、無言のまま。
「お前はもう寝ろ」
「うん……」
2人での話があるから、ここへ呼んだのだろう。他の店などへ行かないのは、誰にも聞かれたくない内容なはず。
「おやすみ……」
「ああ……」
洗面所で歯を磨いていると、拓海の大声が聞こえてくる。
「だから言ったろ!?」
洗面所から出て、静かに部屋へ行く。ドアを閉めても、大声での会話は聞こえてきた。
「何が言いたいんだよ!」
「解ってんだろ? 自分でも!」
ベッドに入っても、耳をそばだててしまう。
完全に喧嘩。昨日から2人がおかしかった原因だろうが、内容は解らない。
「拓海に迷惑かけてねえだろ!?」
「あいつを雇ったからだろ!?」
僕の事だろう。拓海は、僕が店やここにいるせいで怒っている。
ここを出たくても、手持ちは後数万円。安いネットカフェで、10日持つかどうかだ。接客仕事だから、シャワーも毎日必要になる。
そんな生活をしていたら、マンションを借りる資金も貯まらない。
「何でオレまで巻き込むんだよっ!」
「俺だって考えてんだよっ!」
その後は、暫く無言。
睨み合っている2人の様子が、想像出来た。
「龍のしたい事が、解んねえんだよっ!」
日払いにしてもらえれば、ネットカフェでも困らない。思い切って、そうする方がいいのだろうか。
「ああ?」
拓海が何か呟いたらしい。龍の声だけが聞こえた。口喧嘩だけならまだいいが、殴り合いにならないか心配だ。
「じゃあなっ!!」
拓海が帰るようだ。
もし僕がいなければ、セックスしたりして仲直り出来たかもしれない。男女だが、そういった小説も読んだ事がある。
今までは、店だって2人だけでやっていた。忙しいだろうが、それで上手く行っていたのだろう。
最初は何も知らずに、そこに割って入ったような僕。その存在が気に入らなくても、拓海は悪く無い。
バタンと、勢いよく玄関ドアが閉まる音。
慌ててリビングへ行った。
「龍。いいの?」
「ああ? 全部、聞こえてたか……」
小さく頷く。
「追いかけた方が……」
龍が急に立ち上がり、僕の部屋へと連れ込まれる。