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僕と彼のイルミネーション
第8章 困惑
「龍?」
ベッドに押し付けられ、強く抱きしめられた。
溜息をついた龍は、そのまま動こうとしない。パジャマを脱がそうともせず、ただずっと抱きしめているだけ。
「あいつ。拓海には、全部黙ってろよ……」
それは、僕を犯した事も含めてという意味だろう。
当たり前だ。拓海じゃなくても、誰にも言えない。余計にこじれてしまうだろうし、僕にだってプライドの欠片はある。
知らない龍に着いてきて、結局犯されてしまうなんて。龍が優しいのは、僕を飼っているとでも思っているのだろうか。
「龍……?」
気付くと、龍の体から力が抜けていた。
穏やかな呼吸で眠っている。
僕は動けないまま。小柄な真琴に抱き枕にされたと思ったら、今度は大柄な龍。
「……希」
「え?」
龍は、それ以上何も言わない。寝言のようだ。僕は僕として、一応認識されているらしい。
この2日間は忙しくて、写真の少年についても忘れられた。
もう、どうでもいい。犯されたのは、過去の出来事。事実は消えないが、そう考えるしかない。
それより、拓海が心配だ。この世界で男同士の同居など、拓海だって気に入らないだろう。
電話をしたかったが、今は動けない。暑くてエアコンを点けたかったが、それも無理。
8月に入った東京は、北海道と比べ物にならない蒸し暑さ。それなのに、酔って熱くなった龍の抱き枕状態。
それでも疲れから、いつの間にか眠っていた。
「オハヨっ」
昼になってリビングへ行くと、龍は変わらない笑顔。昨夜の事全てが無かったよう。
「メシだぞ」
出してくれたのは、サラダを添えたパンケーキ。テレビで観ていたような、厚みのある物。
「喰えよ」
「いただきます。……美味しい」
フワフワしていて、テレビでの食リポの通り。
「龍は、どうして料理が上手いの?」
「好きなだけだよ」
拓海の事は気になったが、今更訊くのも無粋だろう。当たり障りない話題だけを選び、2人で笑い合った。
そんな時間は楽しい。
1日を穏やかに過ごし、今日は内鍵を掛けてから眠りについた。