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僕と彼のイルミネーション
第8章  困惑



「お疲れー。拓海、後頼む」
 閉店してすぐ龍が出ようとすると、拓海が急いで腕を掴む。
「どこ行くんだよ」
「お前に関係ねえだろ?」
 また2人の睨み合い。
「瑞希、お前は先に帰れ」
 拓海に睨まれ、僕は鞄を持って店を出た。
 2人の間に入って、宥める自信は無い。理由も解らないし。
 細い抜け道を通って周平の店へ行ってみたが、もう店のライトは消えている。
 念の為にと裏口のドアをノックしてみると、周平が顔を出した。
「どうしたの?」
「あの……。龍と拓海さんが、ずっと喧嘩してて……。金曜から」
「取り敢えず、入りなよ。ねっ」
 営業中とは違い、ライトは絞ってある。
 勧められたソファーへ座るとジュースを出してくれて、周平は水割りのセットを持って来た。
「ゆっくりでいいよ? 2人が、どうしたの?」
 水割りを作りながら訊かれる。
「あの……。ハッキリと、理由が、解らなくて……」
 水割りと乾杯してから、話を続けた。
「龍と拓海さん、何か揉めてて……。拓海さんが、僕に掴みかかってきたり……」
「そうか……。あの2人は、昔から仲が良いからね」
 そうとは思えない。営業中は協力しているが、プライベートでは仲が悪そうに見える。
「後、ミラージュって所に、僕がいたって、お客さんに言われて……」
「ミラージュか……。いたわけじゃないよね?」
「はい。初めて聞きました」
 周平が腕時計を見た。
「行こうか。あそこは、まだやってるから」
「え?」
「実際に行った方が、解りやすいから」
 ミラージュと聞いて、龍は慌てていた。外に出たのは、そこへ行こうとしたからだろう。拓海は急いで止めに行き、龍を連れ戻した。そうなると、気にはなる。
 龍が店を空けてでも行きたかった所。
「テーブルは、そのままでいいから」
 言われて表から出ると、周平が鍵を掛ける。
 通りを歩いて路地をいくつか曲がると、その奥に煌びやかなネオンの店があった。
 “ミラージュ”と書かれている。
 周平がドアを開けるのに着いて行く。
「いらっしゃいませ」
 店の中は静かなBGM。入ってすぐの所は受け付けのようで、黒服が2人いるだけ。
「どうぞこちらへ」
 黒服の1人に案内され、店の奥へ行った。


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