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僕と彼のイルミネーション
第1章 繁華街
表の看板を店内へ入れた拓海も、その隣に座った。
「瑞希、どうだ? 疲れたろ」
「少し……」
「龍。あいつ、使いもんになんの?」
言った拓海が龍の胸ポケットから煙草を出し、龍の煙草の先で火を点ける。
そんな事にドキリとした。
この二人は、恋人同士なんだろう。それなら、拓海の冷たい態度にも納得がいく。
「まだ初日だぞ? 客は、瑞希に興味ありそうだったろ?」
拓海は何も答えないまま。
「さて。帰ろうか。残った洗い物は、水に漬けとばいいぞ。明日で」
「はい……」
内心ホッとした。多くの客が帰った後だから、洗い物も多く残っている。でも、緊張と疲れから眠い。
「瑞希、行くぞ」
龍が煙草を消す。
「行くって、どこにだよ」
拓海が、龍と僕を交互に見る。
「俺んち。部屋、貸してるから」
「何だよ、それ」
「行くトコ無いって言うから」
龍は“貸してる”と言ったが、家賃はいらないと言われていた。
「お先」
乱暴に煙草を消すと、拓海は奥から鞄を取って出て行ってしまう。
「なんだよ、あいつ。コレに、水入れといてくれ。まだ捨てるなよ。火災防止に」
灰皿をカウンターに置かれ、水を入れて元へ戻した。
龍と一緒に店を出て、鍵を掛けた彼がタクシーを止める。
マンションまで歩けない距離じゃないが、今日は疲れているから助かった。
マンションへ着くと、龍がリビングで呑み始める。何となく向かいへ座ると、ジュースを出してくれた。
「疲れたろ?」
言いながら彼は、テレビのチャンネルを替えている。
始まったばかりらしい古い洋画で止めると、それを観ながら無言で呑んでいた。
「あ、俺の事は、“龍”でいいぞ。敬語も使うなよ」
「はい。う、うん」
すぐには慣れない。
店は、本当に普通の呑み屋。二人は席に付いていたが、水割りを作ったり話したりしていただけ。
龍のマンションだが、家に戻って来られてホッとした。そのせいで安心し、欠伸が出てしまう。
「寝ていいぞ。昼頃起きればいいから」
「うん……。じゃあ、おやすみなさい……」
「おやすみー」
彼に手を振られ、僕の部屋へと向かった。