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僕と彼のイルミネーション
第9章 決心
「えー。そうなんですかあ」
店では、僕も裏の顔。たまに失敗はするが、いつも明るい瑞希。
「恋人ですか? まだ、出会いが無くて」
「じゃあ、オレが立候補するよ」
そう言いながら、客は笑っている。
僕はまだ何も知らない、可愛い瑞希。そう思い込むと、楽に話せるようになった。
「お疲れさまでした……」
相変わらずの仕事をして、僕は1人で先に店を出る。
「瑞希っ!」
「龍っ!」
龍が来ようとしていたが、拓海に止められたようだ。
僕がマンションを出たのは、龍から拓海に話すだろう。早く帰って眠りたい。
この一帯から離れれば、ネットカフェはいくらでもある。1番安い所を探し、週単位で借りておいた。
ベッドに比べれば窮屈だが、龍のマンションで怯えて暮らすよりはいい。
少し遠いが、月単位で借りられるマンションもネットで調べた。狭いが家具家電付きで、前払いだから保証人もいらない。その方が安上がりだろう。明日にでも、問い合わせてみるつもりだ。
フェリータでの給料があれば、何とか生活していかれる。
自立。自分の居場所を作る。それが目標。
いつか、ちゃんとした恋人だって出来るかもしれない。真琴と涼介のように。
ソファーをリクライニングにして横になり、ケットを掛ける。
東京へ来てすぐの1週間とは、気持ちが違う。仕事があるというだけで、安心出来た。
騒がしい声が聞こえ、目が覚めてしまう。
受け付けでの、店員と客の遣り取りらしい。たまに酔った客が来て、店員に絡む事もある。
時計を見ると3時。
関係ないと、体勢を変えて目を瞑った。
「お客さん。困ります!」
煩くて寝付けないが、僕は昼に起きればいい。早起きする客には、迷惑だろうが。
「瑞希っ! 瑞希っ!」
「えっ?」
龍の声だと解り、思わず個室を出てしまった。それを見た龍が、走って近付いてくる。
「瑞希っ! ここで、5件目だぞ……。帰るぞっ!」
龍に掴まれそうになった腕を引っ込めた。