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僕と彼のイルミネーション
第9章  決心


「もしもし。見つけた。ああ。よろしく」
 龍はどこかへ電話をすると、僕の借りていた部屋へ入る。
 勝手に荷物をまとめたらしく、キャリーバッグを持つと壁際まで追い詰められ、結局腕を掴まれた。
「騒がせたな」
 龍は受け付けにポケットから出した1万円札を置くと、またキャリーバッグを持って外へ出る。エレベーターで降りてタクシーに乗っても、腕を放してくれない。
 いくら何でも、走っているタクシーから逃げられないのに。それに全財産の入ったキャリーバッグは、龍の脚の間。
 着いたのはマンションの前。ここでもポケットの1万円札を出し、釣りは受け取らずに降りる。
 何だか捕らわれの身にでもなったよう。
 龍が腕を放したのは、マンションのリビングへ入ってから。
「え……?」
 そこにいたのは、拓海と真琴と涼介と周平。
「座れよ」
 龍に言われ、空いていた真琴の隣へ座った。
「ローラー作戦大成功!」
 真琴が言う。
「真琴。俺達は、ずっとここにいただろう?」
「だってー。ここで瑞希を捕獲する係じゃん?」
 捕獲だなんて、まるで野生動物扱いだ。
「眠い……」
 真琴が、涼介に寄りかかる。
「どんだけ探したと思ってんだよ……」
 拓海の溜息混じりの言葉。
「見つかって良かったね。龍」
 周平は相変わらず穏やかに微笑む。
「みんなにも頼んで、ネットカフェを探してもらったんだよ。多分そのどっかだと思って……」
 龍に言われると、何となく気まずい。
 でも僕は、明日もちゃんと出勤する予定だった。単に居候をやめただけ。
「瑞希。お前、なんか勘違いしてんだろ?」
 拓海に睨まれるのはもう慣れた。
「オレと龍は、ヘンな関係じゃねえからなっ」
「え?」
「やっぱそうか……」
 龍も溜息をついている。
「オレはタチだよ。よく間違えられるけど。だから龍は、対象外」
 拓海が視線を合わせずに言う。
「ええっ?」
 タチが男で、ネコが女の役割。龍と拓海じゃ、男同士になってしまう。実際にそうだが。
「ネコの龍も、可愛いかもー」
 真琴には、緊張感の欠片も無い。
「それにオレには、周平がいるし」
 驚きで声が出なかった。
 拓海と周平が恋人同士? という事は、周平はネコなんだ。


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