この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
僕と彼のイルミネーション
第9章 決心
「もしもし。見つけた。ああ。よろしく」
龍はどこかへ電話をすると、僕の借りていた部屋へ入る。
勝手に荷物をまとめたらしく、キャリーバッグを持つと壁際まで追い詰められ、結局腕を掴まれた。
「騒がせたな」
龍は受け付けにポケットから出した1万円札を置くと、またキャリーバッグを持って外へ出る。エレベーターで降りてタクシーに乗っても、腕を放してくれない。
いくら何でも、走っているタクシーから逃げられないのに。それに全財産の入ったキャリーバッグは、龍の脚の間。
着いたのはマンションの前。ここでもポケットの1万円札を出し、釣りは受け取らずに降りる。
何だか捕らわれの身にでもなったよう。
龍が腕を放したのは、マンションのリビングへ入ってから。
「え……?」
そこにいたのは、拓海と真琴と涼介と周平。
「座れよ」
龍に言われ、空いていた真琴の隣へ座った。
「ローラー作戦大成功!」
真琴が言う。
「真琴。俺達は、ずっとここにいただろう?」
「だってー。ここで瑞希を捕獲する係じゃん?」
捕獲だなんて、まるで野生動物扱いだ。
「眠い……」
真琴が、涼介に寄りかかる。
「どんだけ探したと思ってんだよ……」
拓海の溜息混じりの言葉。
「見つかって良かったね。龍」
周平は相変わらず穏やかに微笑む。
「みんなにも頼んで、ネットカフェを探してもらったんだよ。多分そのどっかだと思って……」
龍に言われると、何となく気まずい。
でも僕は、明日もちゃんと出勤する予定だった。単に居候をやめただけ。
「瑞希。お前、なんか勘違いしてんだろ?」
拓海に睨まれるのはもう慣れた。
「オレと龍は、ヘンな関係じゃねえからなっ」
「え?」
「やっぱそうか……」
龍も溜息をついている。
「オレはタチだよ。よく間違えられるけど。だから龍は、対象外」
拓海が視線を合わせずに言う。
「ええっ?」
タチが男で、ネコが女の役割。龍と拓海じゃ、男同士になってしまう。実際にそうだが。
「ネコの龍も、可愛いかもー」
真琴には、緊張感の欠片も無い。
「それにオレには、周平がいるし」
驚きで声が出なかった。
拓海と周平が恋人同士? という事は、周平はネコなんだ。