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僕と彼のイルミネーション
第9章 決心
物腰が柔らかいとは思っていたが、ずっと年上だから、勝手にタチだと思っていた。
拓海もそうだが、見かけだけじゃ解らない。
「後は、広希の事だろ?」
その名前を聞くと、何故か胸が痛む。
龍は今もヒロキを忘れられず、名前が出ただけでその店へ行こうとした。
僕にそっくりなヒロキに会いに。
「龍は、まだ広希が好きで追っかけてるんじゃねえからな」
さっきから話しているのは、拓海ばかり。龍は視線を落としている。
「そうだろ? 龍。ハッキリ言えよ」
「ああ……」
それ以上龍は何も言わない。代わりに拓海が口を開く。
「広希は龍を騙して、金を持ち逃げしたんだよ。それは、ここにいる全員が聞いてる」
真琴の溜息が聞こえた。
「確かに可愛かったけど、性格は瑞希と全然違うよなあ。涼介にまで、色目使ったりしてさあ」
「だからオレも最初は、お前を働かせるのに反対だった。見かけが似てるから、また騙されると思って。龍は人がよすぎるから」
言ってから、拓海が冷蔵庫から人数分のビールを持ってくる。
「1年くらい付き合って、フェリータでも働いてた。ある日突然いなくなって、金庫の金も、全部なくなってた。俺の貴金属も……」
龍の悔しそうな声。
「お前がいないのに気付いた時、真っ先に金庫を見た。そんな自分にも、腹が立った……」
1度そんな目に遭えば、仕方がないだろう。
「店に来たから、安心はした。でも……」
「じゃあ、あの女の人は? 夜中に訪ねて来るなんて。龍も、楽しそうに呑んでたみたいだし……」
この際だから全部言ってやりたくて、責めるように言ってしまった。何をしようと、龍の勝手なはずなのに。
「女?」
拓海が眉をひそめる。
「薫(かおる)だよ……」
龍が呟くと、真琴が笑い出す。
「涼介の姉ちゃんじゃん。店が終わった後、来たんだろ? たまに来てんだよね?」
「店で酔うと、解ってくれる誰かと、話したくなるから。龍、ごめん……」
何故か涼介が謝っている。
「薫はビアンだよ。なあ、涼介」
「ああ」
レズビアンの事。それなら、同じ女性にしか興味がないはずだ。
何だか色々ありすぎて混乱してくる。