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僕と彼のイルミネーション
第9章  決心


 真琴や涼介は客だと解るが、みんなで僕を探してくれた。こんな時間まで。
「周平さんの店は、この街で長いから。昔よく通ってた。そこで働いてたのが、拓海」
「じゃあどうして、拓海さんは今、龍の店に?」
「俺が店をやりたいって周平さんに相談してた時は、料理が全然出来なかったんだよ。拓海は、調理師免許を持ってるから」
 呑み屋の類では、保健所での講習を受けるだけでいいと、地元のスナックのママに聞いた事がある。食べ物は出しても、調理師はいなくても構わないと。昼間、道端でだが。
「周平さんが提案してくれたんだ。恋人同士で同じ店で働くと、すぐ客にバレるって。拓海も理解して、ウチに来てくれた」
 拓海が、調理師免許を持っているのにも驚いた。
「調理師免許……」
 また体を離した龍が、僕の手を握りながら話し続ける。
「拓海は中学の後、調理師の専門学校に通ったんだって。免許は取ったけど、金髪じゃ、普通の店は雇ってくれねえって言ってた。元々ゲイだから、この街に来たって」
 医大に調理師なんて、みんな凄い。長く店をやっている周平も。僕には何の取柄も無い。
「龍。僕は、何の役にも立たないよ?」
「そんな事ねえよ。瑞希がいるだけで、店が明るくなる。今度広希の事を言われたら、俺がちゃんと否定するから」
「うん……」
 真っ直ぐに向いていた、龍の視線が落ちた。
「悪かったな。最初の時……。初めてだって、知らなくて……」
「え……」
 初めてのセックスの時だろう。
 あの時僕が抵抗出来なかったのを、“抵抗しない”と取られたのかもしれない。ヒロキの代わりじゃなかったのが解れば、過去はもういい。
「オレのモノにしたかったから、焦って……。悪かったと思ってる」
 それならあの夜の寝言は、僕の名前。そう考えそうと思った。
「瑞希……。俺、限界なんだけど……」
「え?」
「そんな可愛い顔されたら……」
 握っていた手を、龍の股間へ持っていかれた。
 ジーンズの上からでも、確かに解る硬さ。
「あ、後、もう1つだけ。周平さんの所へ行った夜、どこに泊まったの?」
 疑問は、全て解決しておきたかった。


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