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僕と彼のイルミネーション
第10章  僕と彼


「飲めるか?」
 解らないが、龍はいつも飲んでくれている。
 目を瞑って飲み込むと、ゴクリという音が店内に響くよう。
「よしよし」
 僕の頭を撫でてから、龍はそのままでカウンタ―の方へ行く。
 もう電源を切ってある保温気を開けると、おしぼりを持って来た。
 口を押さえたままでいると、龍に袋から出したおしぼりを差し出される。彼もおしぼりで、自分の性器を拭いている。
「口、ゆすいできていいぞ?」
 申し訳ないと思いながらも、口をゆすいでうがいをした。
 いつもは、僕の中から流れ出る物。それを飲めたのは、龍だから。嫌だと思わなかったから。
 戻ると、龍は身支度を整え終えていた。
「なんてな。その後、周平さんから、理由は聞いてっから」
「龍っ!」
 知ってて、意地悪をするなんて。
 多分僕の顔は真っ赤。龍がまともに見られない。
「けど、大変だったんだぞ。拓海のキレ方。聞いた客が、周平さんの店の常連だったから、絶対間違い無いって」
 そんな方向だとは知らなかったが、周平と行ったのは本当。僕にだって落ち度はある。
「だから周平さんも、拓海にオシオキされたかもな。もっと過激な……」
 今よりもっと過激だなんて、想像がつかない。周平さんに悪い事をしてしまった。
「帰るぞっ」
 急いで支度をして、龍の後から店を出る。


 マンションへ戻ると、寝るのは龍のベッド。
 エアコンを低めに設定しているから、彼は長袖のパジャマ。
「お前、半袖で寒くないのか?」
「うん」
 地元の北海道では、もう海で遊べなくなる季節。
 暑いといっても北海道の夏はカラっとしている。東京の夏は湿気が多くて予想以上に暑く、エアコンが点いていても、龍の温もりで暑いくらい。
「瑞希? 怒ってっか?」
「え?」
「さっきの、フェラの事」
 口にされると、思い出して恥ずかしい。
 でも、怒ってはいなかった。
「ううん……」
 それだけ答え、龍の胸に顔を埋める。
 背中へ回る彼の腕。
 その温もりに幸せを感じながら、僕は目を閉じた。


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