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僕と彼のイルミネーション
第2章 色々な出会い
シャツもジーンズも、三着ずつしか持って来なかった。その代わり、下着だけは多めに。
「でも僕、お金が……」
数万はあるが、服を買う余裕は無かった。
「気にするなって。従業員への、先行投資だよ」
確かに、毎日同じ服で店へ出られない。給料が出たら少しずつ返そうと、今は龍に甘える事にした。
「俺が選ぶぞ?」
「うん……」
それから三十分もすると、カゴ二つの会計。
お礼を言ってから店を出た。
「龍っ!!」
遠くからの声に当たりを見回すと、小柄な少年が走ってくる。
美少年という言葉が似合う。ストレートの黒髪は前髪だけが少し長くて、整いすぎた顔。僕と同じくらいの身長だった。
「買い物? 随分買ったねー。この子は?」
少年に見つめられ、龍を見る。
「新しいバイトの、瑞希。18歳」
「よろしく。オレ、真琴(まこと)」
真琴に頭を下げた。
「マコちゃん。早いよー」
後から来たのは、背の高い青年。
「龍、久し振り。土曜には行くから」
「久し振りって、たった一週間だろ?」
三人で笑い合っている。
「新しい子で、瑞希だって。18じゃ、オレ達より三つも歳下じゃん」
真琴に言われて驚いた。真琴も、僕と同じくらいだと思っていたのに。
「俺は涼介(りょうすけ)。よろしく」
「よろしくお願いします……」
改めて、二人に頭を下げた。
「二人は同じ大学の同期で、土曜の常連」
龍に言われて、また軽く頭を下げる。
同期という事は、二人とも21歳。涼介はもう少し大人っぽく見えて、茶色い髪のせいか、穏やかな雰囲気。
「お茶でもしたいけど、まだ講義があるから。昼を食べて戻るところなんだ」
「いいじゃん。サボったってー。お茶しよう」
真琴が涼介を見上げる。
「マコちゃんは、出席ギリギリだろう?」
真琴は何も言えなくなってしまったよう。
店の常連なら、彼らも同じ性癖のはず。こんな街中で会うなんて、やはり東京は凄いと思ってしまった。
「ほら、戻るぞ。龍、また」
「ああ」
真琴は、涼介に引っ張られるようにして戻って行く。
束の間の騒がしさが去り、龍が笑っている。
「あいつら、いつもあんなんだから。メシでも喰いに行くか」
二つの袋を持った龍に促され、タクシー乗り場の方へと歩き出した。