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舞い降りた天使
第7章 桜

けど俺はまだいい

小さくて
そのことを
よく分からないまま育ったから

姉ちゃんは
どんなに大変だったろう
高校生になると
俺の世話をしながら学校に通い
バイトもしてたんだよな…


母親のことは
よく分からないと言っても
忘れられない記憶もある

幼稚園の行事に
親が来ていなかったことや
お弁当の日に
コンビニのパンを持たされたこと…


俺は母親の温もりを知らないんだ


しばらく封印していた記憶がどんどん蘇ると
たまらない孤独感がまた俺を襲い
気がつけば
布団を涙で濡らしていた

真穂に
会いたい

真穂を
抱きしめたい

真穂に
抱きしめられたい


真穂に

優しくされたい


そう

俺は真穂を癒すと言いながら
いつからか
真穂に癒されたいと思っていることに
薄々気づいていた


子供がいる
優しい母親の真穂に

旦那がいる
年上の真穂に

俺は

恋をしてしまったんだ



それから俺は
何度も何度も
携帯をチェックしていた

けど
真穂からの連絡はない

そりゃそうだと思う

さっちゃんを風呂に入れて
寝かせて
また明日は早起きなんだ

そう分かっていても
なんだか仲良しな家族の中に
俺の入る隙間なんてない
と言われているようで…
俺は
『不倫』という言葉の意味を
痛感したような気がしていた

これが
不倫と言っていいのかどうかは
わからないけど

だってさ

俺が一方的に
好きになっただけなんだから

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