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舞い降りた天使
第12章 通告
「ないよ、熱なんて」

「帰った方がいい。
仕事なんて無理だよ」

「大丈夫だって。
それより真穂の話」

「相談は今度にするから」

「え?何言ってんだよ」

「ほんとに帰った方がいいよ。
熱、きっとすごく高い」

「真穂、ちょっ…」

真穂は俺の背中を押すようにして
俺を帰らせようとした

ほんとは話したいことがあるのに
真穂は自分のことより
俺のことばっかり考えてんだ

こんな時に風邪ひく俺も
間が悪いんだけどさ

「相談なんて大袈裟なこと言ったけど
大したことじゃないの。
だから」

そんなわけないだろ

俺はたまらなくなって
疲れた顔の真穂の手を握り
休憩室まで移動すると
真穂を思い切り抱きしめた

「大したことないとか
そんな顔で言っても説得力ない。
何があったんだよ。
旦那、帰ってきてただろ?」

「えっ…」

旦那のことを俺が知ってることに
真穂は驚いたみたいだった

「ごめん。
心配で昨日の夜
家まで様子見に行ったんだ。
そしたら窓に男の影が見えたから」

「……」

真穂からの返事はなく
俺は気持ち悪いと思われたんじゃないかと心配になって
真穂の顔を覗き込んだ

「ごめん。
ストーカーみたいだよな。
もう、しないから」

「巧くん…」

「ほんと、もうしない」


「来て…くれてたんだ…」


真穂は
そう呟くと
急にポロポロと涙を流した


「暴力でもふるわれたのか?」


「ちがっ…」


「さっちゃんは?無事?」


「…うん」


「よかった…」


俺は
すぐにドアが開かないよう
念のためドアにもたれかかり
そしてもう一度
真穂を優しく抱き寄せた
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