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最後の恋に花束を
第7章 大学二年の夏
寝室へ入るとヒロの寝息が聞こえ、少しだけホッと胸を撫で下ろした。遙は、行儀良くマットレスの隙間の溝へとハマっていた。その光景が面白くて、思わず笑みを溢した。
「 寝心地はっ、どうですかっ… 」
笑いを堪えながら彼に近付き、小声で話しかける。スマホを開いていた彼は、チラリと私に視線を移す。
『 いやー、寝心地最高っすよ 』
彼もケラケラと笑い、自分の居場所を楽しんでいるようだった。その姿を横目に、私は自分のベッドへ入った。
「 じゃあ、おやすみ 」
そう告げて瞼を閉じる。
まだ起きているはずの彼の返事はなかった。
…ー
数分が経っただろうか。
まだヒロの寝息だけが響いている寝室。ガサッと布団が動き、マットレスが揺れるのを感じた。きっと遙のことだろうと思い、私は瞼を閉じたまま寝たフリをしていた。
すると近くに人の温もりが感じられ、寝返りを打つとまさに、その人の身体に触れた。
薄っすらと重い瞼をこじ開ける…
そこには見慣れた遙の顔があった。
瞼を閉じている遙。
気配を感じたのか、私が瞼を開けたすぐ後に彼も瞼を開けた。少しだけ眠そうな、少年のような表情をしている遙。
視線が交わるが、彼が言葉を発する事は無かった。
同じように、私も言葉を発することは無い。
少しずつ近付く、彼の唇
息がかかるほどの近距離になった瞬間
彼の唇が優しく、私の唇へと重なった…ー
私も彼も、言葉を発する事無く…
小さくリップ音がしたと思った瞬間に、彼の唇は離れてしまう。その彼の唇を、薄目がちに見つめる。
愛おしい人の、唇
遙の瞳に視線を移すと、真っ直ぐに私を見つめている。私の腰に彼の腕が伸び、グイッと抱き寄せられる。
密着する身体
早くなる心臓の音
甘い香りと熱を帯びた吐息
彼と視線が交わった瞬間
再び彼は私に少しだけ強引な口付けを落とした。
チュプッ … と彼の舌先が私の舌に絡み付く。静かな寝室に、重なり合った唇の隙間から漏れる吐息がいやらしく響く。
薄っすらと瞼を開ければ、夢中に口付けを繰り返す遙の姿があった。