この作品は18歳未満閲覧禁止です
![](/image/skin/separater16.gif)
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
最後の恋に花束を
第8章 大学最後の冬
![](/image/mobi/1px_nocolor.gif)
ナオトに会う日はすぐにやって来た。
午後6時頃サキに呼び出された私は、待ち合わせの居酒屋前に居た。寒さにマフラーに顔を埋めていると、見慣れた男性が前に現れる。
『 どうも、カナちゃん 』
そう私の名前を呼んだのは、ナオトだ。アルバイト中に何度か話した事があるので、彼は親しそうに私に声をかけてくる。
隣にはサキの姿があった。
『 可奈ちゃんお待たせしましたぁ… 』
彼女が苦笑いして私を見る。
「 こんばんは 」
私は一応営業スマイルを彼に向ける。
サキには " 遅いよ〜? " と軽く肩を叩いた。
『 ところで今日はどうしてカナちゃんも? 』
何も知らない彼は不思議そうにしている。
『 まあそれは飲んでからねっ!』
そう言いながら、サキは私と彼を連れて居酒屋の中へ入った。
個室のテーブル席に案内されると、私とサキは隣同士に座り向かいにナオトが座った。
『 カナちゃんは何飲むの?』
メニューを私に見せながら、彼が口を開く。
「 じゃあ私はハイボールで 」
『 おお〜、カナちゃんお酒好きなの? 』
「 好きか嫌いかだったら、好きですね 」
そんな話をしながらファーストオーダーをして、少し経つと三人分のアルコールとお通しが運ばれてきた。
『 ハイ、じゃあカンパーイ 』
彼がそう言いながら、カチンッとグラスを鳴らした。
コクコク、といつも通りハイボールを口にする。
彼とサキは、ビールを頼んでいた。
『 ところで今日は何でカナちゃんもいるの?』
お通しを摘みながら彼が私を見る。その彼と視線が合い、思わず視線を逸らした。私は隣に座っているサキの方を見る。
『 んーとっ… … 』
喋り始めるかと思いきや、黙り込む彼女。
小さくなった彼女の姿を見て、私は口を開いた。
「 あの、ナオトさんって彼女いるんですか?」
そう、唐突に。
『 んー! 彼女、いるよ 』
もぐもぐと口に含んでいた物を飲み込むと、彼はそう公言した。堂々とした姿で。
![](/image/skin/separater16.gif)
![](/image/skin/separater16.gif)