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最後の恋に花束を
第8章 大学最後の冬

ナオトに会う日はすぐにやって来た。
午後6時頃サキに呼び出された私は、待ち合わせの居酒屋前に居た。寒さにマフラーに顔を埋めていると、見慣れた男性が前に現れる。


『 どうも、カナちゃん 』

そう私の名前を呼んだのは、ナオトだ。アルバイト中に何度か話した事があるので、彼は親しそうに私に声をかけてくる。
隣にはサキの姿があった。

『 可奈ちゃんお待たせしましたぁ… 』

彼女が苦笑いして私を見る。

「 こんばんは 」

私は一応営業スマイルを彼に向ける。
サキには " 遅いよ〜? " と軽く肩を叩いた。


『 ところで今日はどうしてカナちゃんも? 』


何も知らない彼は不思議そうにしている。


『 まあそれは飲んでからねっ!』


そう言いながら、サキは私と彼を連れて居酒屋の中へ入った。

個室のテーブル席に案内されると、私とサキは隣同士に座り向かいにナオトが座った。


『 カナちゃんは何飲むの?』

メニューを私に見せながら、彼が口を開く。

「 じゃあ私はハイボールで 」

『 おお〜、カナちゃんお酒好きなの? 』

「 好きか嫌いかだったら、好きですね 」


そんな話をしながらファーストオーダーをして、少し経つと三人分のアルコールとお通しが運ばれてきた。


『 ハイ、じゃあカンパーイ 』


彼がそう言いながら、カチンッとグラスを鳴らした。

コクコク、といつも通りハイボールを口にする。
彼とサキは、ビールを頼んでいた。


『 ところで今日は何でカナちゃんもいるの?』


お通しを摘みながら彼が私を見る。その彼と視線が合い、思わず視線を逸らした。私は隣に座っているサキの方を見る。


『 んーとっ… … 』


喋り始めるかと思いきや、黙り込む彼女。
小さくなった彼女の姿を見て、私は口を開いた。


「 あの、ナオトさんって彼女いるんですか?」


そう、唐突に。


『 んー! 彼女、いるよ 』


もぐもぐと口に含んでいた物を飲み込むと、彼はそう公言した。堂々とした姿で。

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