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最後の恋に花束を
第8章 大学最後の冬
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「 … ハルくん 」
彼の声に、私の瞳から涙が溢れ出た。
私はずっと… 貴方からの連絡を待っていた…
『 今日暇? 』
電話越しの彼には私の涙は勿論伝わることもなく、普段通りの彼の声が響いていた。能天気で陽気な、彼の声が。
「 暇だけど… ちょっと体調悪くて… 」
『 え、まじ? 大丈夫? 』
「 あ… うん、寝てたら治ると思う… 」
『 …… ふぅん 』
彼が小さくそう返事を溢す。
電話越しには表情は読み取れない。
彼は今、どんな表情をしているのか …
少しの沈黙の後、彼は再び口を開いた。
『 今から、行っていい? 』
「 えっ… いまから…? 」
『 おー、何か欲しいもんある? 』
彼のその言葉に胸が少しだけ痛む。
きっと彼は今、私が風邪でも拗らせたと思っているんだろう。彼の優しさが久し振りに感じられ、思わず口を噤んだ。
『 おーい… カナ? 』
「 ん… ごめん、大丈夫だから 」
『 おー、そっか 』
私が発した声は余りにも弱々しく、自分でもわかるほどに震えていた。
優しい彼の声を聞くのが…
苦しい …ー
そんな事を感じた私の身体は、まるでダムが崩壊して制御出来ない状態になってしまったかのように
震え … 涙が溢れていた。
『 おーい、 カナ? 』
耳元から離したスマホから、彼の声が小さく響く。
胸が … 痛い …
私はスマホの画面に表示されている " 通話終了 " ボタンを強く押すと、そのスマホを玄関の方へ向かって投げる。
ガンッ と鈍い音が響き、スマホが転がる …
転がったスマホを視界に捉えた私は、そのまま瞼を閉じた。
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