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最後の恋に花束を
第8章 大学最後の冬
♪ ピンポーン …
そのチャイムに私は目を覚ました。
どうやら部屋のインターホンが鳴ったようだ。
♪ ピンポーン …
再びチャイムが鳴る。
私は重い身体を持ち上げベッドから降りると、パジャマのまま玄関へ向かう。途中、時計を確認すると正午を過ぎた所だった。
ガチャッと鍵を開けドアノブに手を掛ける。
その瞬間ドアノブが自然と下がりドアが開いた。
「 えっ… 」
伸ばした手は何も掴む事無く伸ばされたままになり、開いた扉の向こうに立っている人が視界に入る。
『 よっ 』
その声に顔を上げると、いつもの笑顔で " 彼 " が立っていた。
「 … ハルくん 」
彼の笑顔に、心臓が跳ね上がる。ずっと会いたかった彼の香りがふんわりと漂う。彼と視線が絡んだ瞬間、思わず視線を逸らした。
『 お前なんで電話出ないの 』
「 … あっ 」
スマホを投げたことを思い出し振り返ると、足元にスマホが転がっている。慌てて手に取り画面を見ると、彼から何件もの着信が入っていた。
『 とりあえず、俺寒いんだけど 』
「 あっ、そうだよね、ごめん… 中どうぞ 」
遙の言葉に促され彼を招き入れる。彼が部屋に入ると、冷んやりとした空気を纏っている事に気が付いた。
「 温かい飲み物でも… 」
気を遣ってキッチンに立つと眩暈に襲われる。まだ身体にアルコールが残っているようだった。
『 あー、俺はいいよ 』
「 … そう、寒い中ごめんね 」
マグカップに伸ばしかけた手を一度止め、グラスへと再度手を伸ばす。水道の水を乱雑にコップに注ぐと、一気に飲み干した。
『 なに、二日酔い? 』
1Kという広くない部屋の中、彼は私の隣に立っている。彼は物珍しい光景を見るかのような眼差しで、私の顔を覗き込んだ。