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最後の恋に花束を
第2章 高校一年の夏
彼の温もりは、たしかに私に伝わっていた。
ハッとして自分の手を見ると彼の掌が覆いかぶさり、ギュッと握られていた。
一気に心臓が高鳴る。握られた手は、一点集中するかのように熱を帯びていく。
それを遮断ように私は無理やり口を開いた。
「 じゃあ、夏休み明けでいい、来てくれる?」
『 もちろん?行くよ。行くとも。』
書道室に来い、と言うわけでは無いがただその言葉だけで彼には伝わったようだった。
握られていた手を振り下ろすかのように彼の温もりから離れる私。じゃあまたね、とだけ言い、彼に背を向けた。
その時、彼がどんな顔をしていたのかはわからない。
私は振り返る事なく、改札をくぐった。