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最後の恋に花束を
第2章 高校一年の夏
夏休みが明けて、ちょうど一週間が経った頃のこと。全ての授業を終え、部活の無い私は下駄箱で靴を履き替えていた。
『 … セ カナァーー!! 』
遠くから男子の叫ぶ声と走る足音が聞こえる。聞き覚えのあるその声に思わず振り向いた。
『 イチノセーーーッ! 』
その声の主は私のいる場所へと近付いてくる。その瞬間見覚えのある彼の姿が見えた。そう、青山遙だ。
『 おっ!見ーっけ!』
「 な、なに、そんな大きな声出して… 」
学校で喋る事がなかったからか、少しだけドキッとする。夏休みに駅で会った彼の姿を思い出す。茶髪に染められていた髪は黒髪へと戻っていた。夏休みが明けてから、彼を見ないように学校生活を送っていたせいかその姿は新鮮に感じた。
『 いや。来いって言われたの、今思い出して。来たんだけど 』
「 はぁー?今更すぎやしませんか… 」
『 一ノ瀬可奈こそ。』
「 なによ。」
『 今日はお習字無いの? 』
「 今日はお休みです。」
淡々と受け答えをする私達。横を通る私の友達は、ふたり友達だったんだ と少し驚きながら通り過ぎていく。
『 じゃあ、この後の予定は? 』
「 フ…フリーです… 」
『 おっしゃ!じゃあ付き合え!」
「 …っは? 」
予想外のその言葉を発した彼は、突然に私の腕を掴み歩き始める。ちょっとまって、と靴を上履きに履き替えると、再び彼は私に腕組みをする。まるで逃がさないようにと。