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最後の恋に花束を
第2章 高校一年の夏

「 どっ、どこ行くつもりっ… 」

『 ここ。こーこ。』

ジャラッと金属音がすると、遙は空いている方の手で鍵を取り出した。その鍵にはネームプレートがぶら下げてあり " 書道室 " と書かれていた。


「 今日はお休みだって… 」

『 自主練だよ自主練 』

「 かっ、書くの?」

『 一ノ瀬が、な 』


そう言うと彼はニコリとしながら私の方を見る。早足で歩いているようには見えない程、穏やかな笑顔をしていた。


『 あれ、遙、なにしてるの。』


書道室に向かう途中後ろから女性の声が聞こえ、早足で歩いていた私達は立ち止まり振り向いた。そこには、綺麗な女性… 遙の彼女のユミが少し怒ったような顔をしながら立っていた。


『 おーユミ。ごめんな今日は部活あるんだ 』


和かな表情のまま彼はそう言うと、組んでいた腕を離し私の肩に腕を回した。突然の彼との距離感に思わず肩が竦む。ましてや彼女の目の前でこんな堂々と。 私の心臓は恐怖で高鳴っていく。


『 遙、部活してたの?』


強い口調で彼女は口を開く。
私の心は、息がつまるほどに固まっていた。


『 いや?今日は見学。』

『 そう… 』


彼女の視線が、私と遙を行き来する。その後彼女の視線は廊下の床へと向けられて、怒りと哀しみが混じり合っているのが感じ取れた。


『 あんまりその子に迷惑かけないようにね 』


彼女は伏せ目がちのままそう呟くと、振り向き背中を見せてあっさりと去っていってしまった。怒っているようにも、哀しんでいるようにも見えたが、女子の肩に腕を回す遙の姿を見慣れているようにも感じた。

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