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最後の恋に花束を
第3章 高校二年の秋

『 あれ、一ノ瀬可奈じゃん。何してんの。』

下駄箱で靴を履き替えている時、声をかけられる。振り向くと遙が居た。少し疲れた顔をしているように見える。


「 あ… 」

『 こんな時間まで何してんの? 』

「 あっ… と 」

『 リボンが、らしくないな 』


彼は私に近づくと、首元のリボンに手を掛ける。さっき急いで結んだのでいつもと違う適当な結び方になっていたのが気になったのか、リボンをスルリと外すと結び直してくれた。相変わらず綺麗な指が視界に入る。


「 あ、ごめん… ありがとう… 」

『 レディらしくしねぇと、お前男っぽいところあるからな 』


意地悪な笑みを私に向ける。久し振りに感じる遙の距離感に少し心臓がはやく脈打つ。


「 うっ、うるさいなぁ…もう 」

『 先輩?帰りますよ。』


遙とのやりとりを裂くかのように、ユウの声が響く。ハッとして私は思わず遙から一歩離れるように後退りした。


『 何、彼氏出来たの?』

「 いやっ、ちが… 」

『 そうです!俺 一ノ瀬先輩の彼氏なんで 』

「 …っえ?はっ?」


予想外のユウの言葉に驚き、ユウの顔を見た後遙の反応に目を向ける。


『 ほぉ、そうか。おめでとう。じゃあな 』


遙は笑って私の頭をポンッと撫でた。そして私の顔を見ることなく、私の横を通り過ぎて行ってしまった。

通り過ぎていった彼は、言葉に反して目が笑っていなかった。疲れた顔のまま、口角だけを上げたような表情で…ー

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