この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エメラルドの鎮魂歌
第5章 青い鳥の唄
回された腕が藍の胸に当たり、どきどきと大きな音を立てる鼓動…。
男に気付かれそうで、気持ちが焦る。
だから、わざと冷たく突き放す。
「…バカオヤジ…。
し、心配するさ…あんたが死んじまったら…俺はまた孤児になっちまうからな」
青山は少しも懲りない。
「…じゃあ、寂しかった?藍…」
甘美な囁き…。
嫌じゃないから、すごく困る…。
「…俺はあんたの養子だろう?子どもにそんなことを聞いてどうするんだ…」
「藍が私をどう思っているのか、聞きたいんだ…」
…抱きしめるけれど、それ以上のことは絶対にしてこない…。
この抱擁もいやらしい感じは全くしない。
親鳥が雛を温めるような優しいやつだ…。
「あんた、俺に手を出さないって誓っていたじゃないか」
「うん。手は出さない。君が大人になるまでは…。
でも、大人になったら自由意思で恋愛は構わない。
私の胸にいつでも飛び込んでおいで」
ぎょっとして男の貌を見上げる。
…その貌は悪戯めいた笑みに溢れていて、藍は肩透かしを食らったような気持ちになり、邪険に胸を押しやった。
「…ふざけんなよ…。あんた…俺を揶揄ってばかりだ…」
青山から離れて窓辺に近寄る。
窓を開けて、初秋の空気を胸いっぱいに吸い込む。
…どこかで綺麗な鳥の声が聞こえた。
もやもやした気持ちが少しだけ晴れた。

「…ふざけていないと、自分を自制する自信がないのだよ…」
驚いて振り返る先には、優雅で美丈夫な紳士の貌に少し気弱な色が帯びていた。
「…え…?」

「…私は絶対に子どもには手を出さない。自分のポリシーは堅固に守る。
…だから…早く大人になってくれ…藍」
…切ないような、哀しいような…不安そうな表情…。

男への愛おしさが温かな泉のようには湧き上がる。
…これが、愛なのか恋なのか…よく分からない。
分からないけれど…。

藍は男に駆け寄り、その逞しい首筋に抱きついた。
…そしてそのやや肉厚な唇に愛情を込めてそっとキスをした。

鳩が豆鉄砲を食ったような青山の貌を見て、くすくす笑う。
「…仕方ないな。オヤジ。なるべく早く大人になってやるよ」
漸く我に返った青山が、苦笑いしながら藍を抱きしめ返した。
「…藍。その頃には…史郎と呼んでくれ…」

…遠くの空で綺麗な声で鳴く小鳥…。
それは青い鳥かもしれないと、藍はくすぐったい幸福感の中で思った…。
/281ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ