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エメラルドの鎮魂歌
第1章 罪と嘘のプレリュード
童話の魔女のような黒尽くめの襟が詰まったドレスを着た薫子は征一郎を脇に従え、侍女に傅れながら現れた。

「お義母様…!」
千賀子が居ずまいを正す。
千賀子付きのナースは慌てて膝を折ってお辞儀をした。

薫子は八雲の傍らをゆっくり通り、八雲の腕の中で身を硬くする瑞葉を冷たく睥睨するとそのまま声も掛けずに千賀子の寝台に近づいた。

おくるみの中の赤ん坊をじっと見つめ、不意に破顔した。
「綺麗な髪の色だわ。…琥珀色の髪に…まあ、瞳も琥珀色なのね…!私は琥珀が大好き。
本当に美しい宝石のような色だわ。なんて美しい子どもでしょう…!
千賀子さん、お手柄だわ」
今まで聞いたことがないほどの晴れやかな声で賞賛し始めた。
そうして千賀子から赤ん坊を抱き取ると、蕩けるような表情で笑いかけた。
「なんて美しい赤ちゃんかしら…」
笑いかけたその貌をふと、瑞葉に向けるといつもの冷酷な眼差しに戻った。
「…そう、この子こそ篠宮伯爵家に相応しい正統な子どもです。金髪に翠の瞳の子どもなど、何かの弾みで生まれてしまった間違いの子どもなのですから。
…八雲、貴方もどうせならこの子に仕えたらどう?」

部屋が水を打ったように静まり返った。
千賀子は泣き出しそうに俯く。

瑞葉がその小さな手で、八雲のワイシャツの胸を心細げに握りしめた。
八雲は瑞葉を驚かさないように静かに…しかし毅然と口を開いた。

「お言葉ですが大奥様、私には瑞葉様の金色のお髪と翠のお瞳が誰よりも美しく感じます。
…このお美しさは神様より特別に齎された恩寵でしょう。それに瑞葉様はとても利発なお子様です。
私はこのようにお美しくご聡明な瑞葉様にお仕え出来、心より幸せに感じております」

瑞葉のエメラルドの瞳が八雲を見上げる。
その美しい瞳には透明な涙で溢れていた。
…ご心配はいりません…と、瑞葉の瞳を見て頷いてやる。

薫子は眉を顰め、暫く八雲を冷たい眼差しで見遣っていたが、やがて薄い唇を歪めると二人に背を向けた。
「ああそう。ではご勝手に。
…全く、自ら貧乏くじを引くものがいるなんてね。酔狂な従者がいたものだわ」

そうして赤ん坊を抱いたまま、女王の宣言のように言い放った。
「この子には優秀なナースを二人付けて。
東翼の一番陽当たりの良いお部屋を子ども部屋にするのです。
…そして、来月にはお披露目の夜会を開きます」





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