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エメラルドの鎮魂歌
第8章 エメラルドの鎮魂歌 〜終わりの序曲〜
…瑞葉は、二十三歳になった。
その容姿は尚一層艶めき、きらきらしいまでの光を放つほどの美貌を誇っていた。
蜂蜜色の美しい髪は背中半ばを覆うほどに伸び、蒼みを帯びるほどの白い肌は更に透き通り透明感を湛え、そのエメラルドの瞳は美しい神秘の湖面のような色に満たされ、その唇は紅も差さないのに紅薔薇のような色鮮やかさを誇っていた。

目鼻立ちの華やかさと裏腹に瑞葉から漂う雰囲気は、暗く深い森にひっそりと咲く希少な白百合のように神秘的で…それでいて寂しげで…触れれば直ぐに儚くなってしまいそうな薄幸さに溢れていた。

…瑞葉は、以前にも増して口数が少なく物静かになった。
使用人と話すこともなくなり、週に一度街から通ってくる老齢の医師と健診の時に僅かに会話するくらいであった。

八雲と言葉を交わすことも多くはなかった。
…話さなくてもお互いの胸の内は計り知ることができるほどに、二人の絆は深まっていたからだ。

…けれど、寝台の中では彼らは饒舌に語り合った。
二人の性愛は更に円熟味を加え、倦怠期を迎えることなく濃密に昂まり、お互いの身体に溺れ続けていた。

八雲は瑞葉の身体を、その指が触れただけで柔らかく蕩けるように作り変えてしまっていた。
瑞葉は八雲に抱かれない日が続くと、熱く濡れた眼差しで男を見つめるようになった。
それでもその身体に触れない日が続くと、瑞葉は美しいエメラルドの瞳を潤ませ、男に縋り付いた。

八雲はその酷薄な美貌に薄く微笑みを刷き、瑞葉の形の良い顎を捉えた。
「…どうされたのですか?」
瑞葉が羞恥から言い淀むと、質問が繰り返される。
「…私に犯されたいのですか?」
透き通るように白い肌が桜色に染まる。
「…犯してくださいと、言いなさい」
八雲の深い瑠璃色の瞳が冷ややかに命令する。

…最初は、瑞葉はその屈辱に耐えられずに首を振った。
するとそのまま男に容赦なく放置される経験を繰り返し、怯えた瑞葉は敢えなく屈した。

…男の足元に跪きその脚に縋り付き、訴えた。
「…僕を…犯して…八雲…」
すると、男の美しく大きな手は瑞葉の薄い身体を抱き上げ、極上の微笑みを浮かべるのだ。
「…お望み通りに…瑞葉様…」

…二人は爛れた性愛に耽溺し、生温かく甘い薫りに満ちた悦楽の沼に溺れ続けていったのだ…。



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