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エメラルドの鎮魂歌
第1章 罪と嘘のプレリュード
…瑞葉の部屋から静かにピアノの音色が漏れてくる。
シューマンのトロイメライ…瑞葉の好きな曲だ。

「兄様!今、帰ったよ!」
八雲が扉をノックするのも待ちきれない様子で、和葉は部屋に飛び込んだ。

「お帰り、和葉。今日は早いね」
ピアノの鍵盤から白くほっそりとした指を離し、笑顔で振り返る。

その拍子に背中まである蜂蜜色の艶やかな髪がさらりと波を打った。
和葉と…そして、その背後に立つ八雲を認めると澄み切ったエメラルドの瞳を細めて笑った。
その瞬間、その空間ごと秘めやかに薫り立つような微笑みであった。

…瑞葉は十四歳になった…。
金色に輝く髪は更に艶を増し、長く背中に垂れている。
小さな貌に優美に整った目鼻立ちは中性的で、どこか儚げな色を帯びていた。
その特徴的だった瞳は、益々美しい光を放つエメラルド色に輝き、形の良い唇は、艶やかな薔薇色だ。
華奢な身体付きは相変わらずだが、背はすらりと伸び、長く美しい手脚を兼ね備えていた。
瑞葉が脚を気にする為に、白く裾の長い中世の姫君のドレスのような衣服を、彼は常に身に纏っていた。


…「こんなにも美しいのに歩けないとは…実に残念だな」
瑞葉の十四歳の誕生日に、久々に息子を見て八雲に嘆いたのは征一郎であった。
「でも、瑞葉さんは本当にお美しいわ。…まるで西洋のお人形のよう…」
取りなすように…しかし、うっとりとまるで芸術品を眺めるようにして、千賀子はため息を漏らした。
薫子は、ちらりと瑞葉に冷たい一瞥だけくれると、すぐに立ち去った。

瑞葉は相変わらず、薫子にとっては亡霊と同等の存在なのであった。

しかし外聞を気にする薫子は瑞葉に必要な食事、医療、教育、衣服などは充分に与えた。
部屋に閉じ込め学校に通わせない代わりに、家庭教師やピアノ教師を雇うことを許可した。

スタンウェイのピアノは、千賀子の実家が贈ってくれた。
千賀子の両親は、この美しいが不遇な孫をいたく不憫に思っていたのだ。
ピアノのお陰で、瑞葉は余暇を楽しめるようになった。

だが、家庭教師はなかなか定着しなかった。
瑞葉が悪いのではない。
男性の家庭教師は皆、例外なく瑞葉を熱っぽい欲望の篭った目で見るようになるのだ。
それを敏感に察知した八雲により、すぐさま解任されるからだった。

そこで若い女性の教師を雇うことで、漸く落ち着いたばかりであった。







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