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エメラルドの鎮魂歌
第11章 エメラルドの鎮魂歌 〜孤独の魂〜
翌朝、なかなか朝食室に降りてこない瑞葉の様子を見に行った執事の奥村が、慌てふためき駆け戻った。

「旦那様!藍様!大変です!瑞葉様のお姿がありません!」
藍の貌色が変わり、間髪を入れずに朝食室を飛び出した。
青山も後に続く。


…瑞葉の私室はきちんと片付き、バロンが寂しげに藍の足元に纏わり付いてきた。
「…バロン…」
バロンを抱き上げ、藍は不安げに次の間に入る。

私物はそのままだ。
クローゼットを開いた青山が、ざっと中に目を通す。
「…コートとスーツ…靴が一足無くなっているだけだな。鞄もそのままだ」

「史郎さん!」
寝室を探していた藍が叫んだ。
青山が駆けつけると、ライティングデスクの上の白い便箋を差し出した。
受け取り読み上げる。

「…今まで、本当にありがとうございました。
どうか、僕を許してください。
バロンを頼みます」

美しく繊細な文字がしたためられ、自筆の記名がされていた。

二人は同時に貌を見合わせた。
「…軽井沢だ…!」
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