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エメラルドの鎮魂歌
第13章 エメラルドの鎮魂歌 〜エピローグ〜
「さあさあ、たくさん召し上がってくださいね。ムッシュー。
アイ様は特にね。そのままじゃあ細すぎますよ。
日本の男性はみんなアイ様みたいに細っこいんですかね?まるでギャルソンですよ」
パリの肝っ玉母さんといった風情のアンナは陽気で世話好きだ。
通いで料理と掃除を頼んでいるが、手際良くこなすし料理の腕も確かで、大変に有能だ。

東京の屋敷と異なり、こじんまりしたこの家では使用人も多くは必要ない。
アンナのように人が良く働き者の家政婦は、貴重であった。

アンナに淹れてもらった珈琲を飲みながら、青山が今日の予定を確認する。
「今夜のヴァレリー男爵の夜会は出席出来そうかい?
…夜八時からだ」
藍は肩を竦める。
「行かなくっちゃいけない?…夜会は苦手なんだ」
青山は苦笑しながら、宥めるように続ける。
「ヴァレリー男爵はお前の絵をいたく気に入ってくださっている。
今度のルーブルの展覧会の推薦人にも自ら買ってなってくださった。
ご招待はありがたく受けるのが得策だと思うね」

諦めたように頷き、卓上の葡萄を一粒口に放り込む。
「分かった。行くよ。
俺は絵に関しては描くことしか出来ない。他は無知だ。あんたの言うことを聞いておく」
青山は朗らかに笑い、立ち上がった。
そうして藍の髪をくしゃりと撫でる。
「いい子だ。では、一度家に帰って正装しなさい。
タイはホワイトタイだ。お前の黒燕尾姿は美しい」
素早く藍の唇を奪い、
…では行ってくるよ。私の愛おしい藍…と、耳元に甘く囁いた。

青山の上着を持って来たアンナが二人の仲睦まじい様子をにこにこと優しい母親のように見ていた。
…ここパリでは男同士の恋愛は珍しくない。
奇異な目で見られないだけでも、パリに住んで良かったと藍は思った。
…何しろ、青山の愛情表現は人目をはばからずあからさまだからだ。

…そこがこの人の良いところなんだけどさ…。

藍は仕事に出かける青山に、精一杯の笑顔を送る。
「行ってらっしゃい。史郎さん。
…愛してるよ」

…まだ人前で愛情を表すのに照れがある藍は、最後の言葉は日本語になった。
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