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エメラルドの鎮魂歌
第13章 エメラルドの鎮魂歌 〜エピローグ〜
舞踏室では、弦楽四重奏により優雅なヨハン・シュトラウスが奏でられていた。

藍の巧みなリードにより、ジュヌビエーヌの緊張は少しずつ解れてきたようで、次第に饒舌に娘らしく語り始めた。
「…藍様とお近づきになれて、幸せですわ」
藍はにっこりと笑い返す。
青山は無愛想な藍に、とにかく笑うようにと厳しく指導をしていたからだ。
「ありがとうございます。こちらこそ、光栄です」
…早くこの皇帝円舞曲が終わらないか、藍の関心はそれだけだった。
「藍様のことは、社交界でも大評判ですのよ。
…そう、先日パリにお見えになった美しい亡命貴族のお二人と同じくらいに」
藍は少し眉を寄せた。
「亡命貴族?珍しいですね」
自分の話に興味を持たれたのが嬉しくて、ジュヌビエーヌは声を弾ませる。
「ええ。…なんでもお一人は獨逸ご出身のお方で、もうお一人は北欧ご出身のお方だそうですの。
…本当に信じられないくらいにお美しいお二人ですのよ。
お一人はそれは見事な蜂蜜色の美しいお髪に、宝石のようなエメラルドの瞳をされていて、まるでお人形のようにお綺麗ですの。
もうお一人は藍様みたいな黒髪なのですが、そのお眼は深い瑠璃色をされていて…。
まるでお伽話の王子様と騎士のようにいつもご一緒に寄り添っておられるのです」

藍は思わずワルツのステップを止めた。
「…え…?」
「本当に仲睦まじいお二人ですのよ。
けれど、謎めいた方たちで、ご自分たちのことは全くお話になりませんの。ご年齢もご本名も…。
あ、そうそう。今宵こちらの夜会にお見えになるとお聞きしましたわ」
「ジュヌビエーヌさん、そのお話を詳しく…」
と、思わず言いかけるのに対してジュヌビエーヌが、藍の背後を見遣り声を上擦らせた。
「まあ!今、お見えになりましたわ!あの方たちですわ」

…入り口付近では、人々の高揚した騒めきが一際大きくなった。


…蜂蜜色の髪、エメラルドの瞳…。
黒髪に深い瑠璃色の瞳…。
まさか…そんな…。
…いや、そんな容姿の人間は欧州では珍しくはない。

落ち着け、藍。
落ち着いて確かめたらいいんだ。
焦ることはない。
焦ってはだめだ。

…藍は深呼吸をして、ゆっくりと振り返った…。



〜la fin〜
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