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エメラルドの鎮魂歌
第1章 罪と嘘のプレリュード
「まあ!…これは一体どういうことですか⁈」
薫子の明らかに取り乱した声が寝室に響いた。

薫子は、ナースが抱いた純白のおくるみに包まれた赤ん坊の貌を一瞥するなり叫んだ。
横に立ち、赤ん坊を覗き込んだ征一郎も絶句した。
「…こ、これは…」
八雲がいるところからは、赤ん坊の容貌や様子は何一つ伺えない。
だが、赤ん坊の容姿が彼らに大変な衝撃を与えていることは分かる。

窓際の寝台に横たわる千賀子が、不安げに話しかける。
出産を終えたばかりで、その貌は蒼白で血の気がない。
「…征一郎様、お義母様…私の赤ちゃんが、どうかしたのですか?なぜそのようなことを…」
どうやら、千賀子はまだ赤ん坊と対面していないらしい。

医師が言葉を選びながら口を開き始めた。
「…恐れながら申し上げます。極めて稀なことではありますが、隔世遺伝ということがございます。
お子様が、このような外見でお産まれになったのは、薫子様のお母様の方の遺伝が強くお出になられたからではないかと…」
「お黙りなさい!私の母はこのような金髪ではありませんでした。ましてや翠の瞳など…!
半分西洋人の血が混ざっている私ですら、髪も眼も黒いのですよ!」
この家の絶対的権力者の薫子の鋭い鞭のような言葉が、響き渡る。
その言葉の内容に、部屋にいる一堂が息を飲む。

ナースが思わずびくりと身体を震わせた瞬間、そのおくるみから赤ん坊の輝くような金髪が見えた。

「息子の征一郎さんですら、西洋人の面影は殆どないのに、なぜ私の孫がこのような先祖返りの容貌なのですか⁈」
憤懣やる方なしといった薫子の言葉が続く。

薫子の母親はドイツ人だった。
若き篠宮伯爵が伯林大学に留学した際に母親と知り合い国際結婚をして、薫子が生まれたのだ。

当時の日本は混血児など珍しく、薫子は周囲から白い目で見られることが多々あった。
しかも日本の風土や習慣に慣れなかった母親は、薫子を生み数年で篠宮伯爵と離婚し、ドイツに帰国してしまったのだ。
まだ幼い薫子を残して…。

薫子の異国人嫌いと自分に流れる異国の血を毛嫌いする性質は、この時に病的なまでに植えつけられてしまったのだった。



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