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エメラルドの鎮魂歌
第4章 美しき森の虜囚
篠宮伯爵家の別荘は、軽井沢の離山から更に車を走らせた森の奥にあった。

「ここで構わない。あとは歩くよ」
青山史郎は運転手に声をかけ、ロールスロイスから降り立った。
運転手は後ほど迎えに来ることを告げ、車をとって返した。
森の木立ちが途切れた途端に現れた古めかしい英国貴族のカントリーハウスのような別荘…それが、篠宮瑞葉が移り住んだ館であった。
青山は暫しそれらを見渡した。

煉瓦造りの塀には蔦が絡まり、高い鉄柵の門扉は他の者たちを排除するとともに、中にいる佳人を囚われておく為の要塞のようにも見える。

石畳みのアプローチを進み、いかめしい扉の前に佇むと同時に計ったかのようにこの家の執事が現れた。

…端麗な石の彫像がそのまま人間になったかのような美貌の執事…それが八雲であった。

「青山様、お待ち申し上げておりました。
どうぞこちらに…」
体温を感じさせない無機質な声が応対する。
にこりともしない執事に青山は端正な眉を跳ね上げ、人好きのする笑みを零した。

「久しぶりだね。
麗しのラプンツェルはお元気かな?」
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