この作品は18歳未満閲覧禁止です

  • テキストサイズ
エメラルドの鎮魂歌
第4章 美しき森の虜囚
仕立ての良いスラックスに包まれた長い脚を優雅に組み直し、青山は穏やかな笑みを湛えたまま続けた。

「君は、和葉くんを誘導して薫子様が一番ダメージを受けるような人生の選択をさせた。
…軍人への道だ。
闊達で武芸全般に優れている和葉くんは元々軍隊に興味があった。
海軍に憧れ艦隊に乗りたがっているのも、君は知っていた。
だから君は、兄の瑞葉くんが廃嫡になることを嘆き、兄思いの和葉くんの薫子様への反抗心を煽ったのだ。
もし、家督を継ぐ予定の和葉くんが軍人になることを選んだら…それは薫子様に一番のショックを与えることになる。
和葉くんに万が一のことがあれば、篠宮家は断絶することになるからね。
…君は和葉くんの純粋な気持ちを利用したのだ。
和葉くんの将来を…君は狡猾に誘導してゆき、その道を選ぶように仕向けたのだよ」

…青山の端正な貌には、もはや笑みの欠片も残っていなかった。
二人の男の間に張り詰めた空気が流れた。

その空気を破ったのは八雲だった。
乾いた笑いを漏らすと、新たなお茶を淹れながら答えた。
「青山様の想像力の逞しさには脱帽いたします。
よくそのようなことを、思い付かれますね」
温かな湯気と共に、紅茶の馥郁たる香りが立ち昇る。

青山は肩を竦め、ゆったりとソーサーごと紅茶碗を持ち上げた。
「私は篠宮と懇意にしている。
彼が話した息子のエピソードを寄せ集め、照合しただけだ。
勿論これは推測に過ぎないし、もし君が今私が言った通り、和葉くんを誘導したとしても…それは罪にはなり得ない。
選んだのは和葉くんなのだからな」
「仰る通りでございます。それらは青山様の推測…。
そして私は、和葉様にそのような狡猾な真似をした覚えもありません。
…和葉様は、お優しいお方です。
恐らく瑞葉様の為に、ご自分で進路を選ばれたのでしょう。
もしこのまま士官になられたとしても貴族出身の和葉様は将校になられるのです。
…そうそう危険な戦場に駆り出されることもありますまい。
ですから和葉様が軍人におなりになったとしても、篠宮のお家断絶になることなど、杞憂に過ぎませんよ」

…それに…。
八雲はふっと、その深い瑠璃色の瞳に艶めいた色を滲ませた。

「和葉様は昔から海に憧れておられました。
…何でも瑠璃色の海がご覧になりたいそうで…。
海軍に入ればそれが叶うと、よく仰っておいででした」


/281ページ
無料で読める大人のケータイ官能小説とは?
無料で読める大人のケータイ官能小説は、ケータイやスマホ・パソコンから無料で気軽に読むことができるネット小説サイトです。
自分で書いた官能小説や体験談を簡単に公開、連載することができます。しおり機能やメッセージ機能など便利な機能も充実!
お気に入りの作品や作者を探して楽しんだり、自分が小説を公開してたくさんの人に読んでもらおう!

ケータイからアクセスしたい人は下のQRコードをスキャンしてね!!

スマートフォン対応!QRコード


公式Twitterあります

当サイトの公式Twitterもあります!
フォローよろしくお願いします。
>コチラから



TOPTOPへ