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卒業祝い
第2章 承
二人の帰り道は一緒だ。

並んで歩くときも、信司は普通に話している。

まだ昼の3時。

二人は中学校が同じなので、同じ町内に住んでいる。

「ユキ。俺んちに寄ってかない?」

信司は、突然話題を変えた。

ユキに少し緊張が走る。

「ほら家に親いないし、気楽にいられるよ。あと、ユキとまだ一緒にいたいし」

ほんとは信司は手をつないで歩きたかったが、同じ町内だとあとで誰かに何か言われるのがうざいと前にユキから言われたことがあった。

ユキは

「どーしよっかなぁ・・・」

と無表情で言ったつもりだったが、目が泳いでいた。

こういうときも、静かに待つ信司。

彼女の思考のタイミングを見計らって

「もう、変なこと頼まないからさ。ねっ、だめ」

と明るく言った。

ユキが、ちらっと信司を見ると、すっごい笑顔でいる。

そして、表情をくるくるとおかしく変えてくるものだから、思わずユキは笑ってしまった。

「信~やめて。変な顔すんのわっ」

軽く小突く。

信司は、すかさず彼女の左腕をとって、右斜め前に位置する自分の家の玄関に、肩をうまく使ってユキを押し込んだ。

「なに~、だいじょぶだよ。行くってば。押すなぁ」






家に入って

「ユキ、オレンジジュースでいい?」

と信司が冷蔵庫を開ける。

「うん」

「ここくるの何回目だっけ?」

「4回目」

「そうだっけ。そんな少なかったっけ」

信司は、とぷとぷとコップにジュースを入れてゆく。

「はい」

と手渡す。

「家の人帰ってくるんじゃない?」

リビングは、なんとなくユキにとって居心地がよくなかった。

「だな。すぐ俺んとこにいこう」

信司も自分のコップにジュースを注ぐ。

「だなって。帰って来ちゃうの、すぐ?」

「いや、そんなことないと思うけど。帰るときは、俺の携帯に連絡あるから、大丈夫だよ」





2階の信司の部屋に上がった。

ユキは、机前にあるくるくる回る椅子にすぐ座った。

「あ!そこ俺の席」

「知ってるよ。ふふ。今日はあたしの席だから」

仕方ないといった感じで、信司はベッドに腰掛けた。
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