この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
約束 ~禁断の恋人~
第2章 決意
小部屋でのスキャンを受け、研究所へ入る。
研究棟は元々ナース寮があった場所に作られたため、病院の敷地内。
それでも病棟や外来と離れているため、一般の者が近付くことはない。
プロジェクトチーム用に新築された研究所は、全部で三棟。それぞれのチームごとに、別の棟を使っている
主に人工知能チップの製作を手がけているのが、電子工学チーム。現在国内で一番性能の良いヒューマノイドを設計した人物を、リーダーとして迎えている。
移植前の整形手術や移植後の健康管理を受け持つのが、医療チーム。
毎日データは送るが、月に一度の健康診断も“Z”の状態を知るための重要な役割だ。
そして僕が所属するのは、実際に移植を行う脳神経外科チーム。
他のチームメンバーとは、月に一度の定例会議以外で顔を合わせることは少ない。
今は三体になった“Z”の学習について、それぞれのチーム独自の学習についても研究している。
成果を競っているわけじゃなく、テスト段階の今、色々な学習について模索中。それぞれのチームが、色々な学習をさせている。
資料や機材が乱雑に置かれた一階を抜け、二階の部屋を開けた。
メインルームとして使用している広い部屋で、奥には仮眠室やシャワールームもある。
中央の応接セットのテーブルには色々な書類が積んであり、背の低い棚の上にもファイルが山積み。整理すればいらない物も多いはずだが、メンバーも気にしながらそのままになっていた。
研究者は、片付けが苦手な者が多い。
僕もそうで、海が来る前はマンションに毎月ハウスキーパーを呼んでいた。
コンピューターは数台あるが、移植手術を行うのは三階。だからここに、大きな医療機器は置かれていない。
関係者以外が見ても、ここがチームのメインルームだとは思わないだろう。
「こんばんは……」
“Z”の学習をしているDr.小早川(こばやかわ)に軽く頭を下げた。